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消化に関係ない部位のがんでも痩せる
問題は、消化に関わる部位にがんができたわけではないのに、痩せてしまう場合です。さまざまな原因が考えられます。がんと告知されたショックで食べ物が喉を通らないということもあるでしょう。また、闘病生活においては、生活の中で活発に体を動かすことができず、食欲を促す刺激が足りないことも関係しています。ほとんどの方がうつ状態となり、睡眠障害を起こします。
仮に栄養は十分に摂取できていたとしても、がん細胞がタンパク質や脂肪を分解し、エネルギーをどんどん使ってしまうので、体が必要とする栄養素が不足してしまうのも痩せる原因になります。そしてもう一つ、がんで痩せてしまう原因と考えられるものに「炎症性サイトカイン」があります。
炎症性サイトカインとは
がんができると、炎症性サイトカインと呼ばれる物質が作られ、体は慢性炎症の状態になります。炎症状態が続くことで、体中の内臓や筋肉では、通常使われる以上のエネルギーを消耗してしまいます。足りないエネルギーを補うために体脂肪や筋肉がどんどん分解され、結果、激ヤセに至ることがあります。
体にがんができると、消化吸収能力の低下、がん細胞によるエネルギー消費、そして、炎症性サイトカインの働きによって代謝異常が引き起こされます。このことを、「がん食欲不振悪液質症候群(CACS:cancer-related anorexia/cachexia syndrome)」といい、がん患者の死因全体の20%以上を占めるといわれています。
がんで痩せてしまうと、「食べなければいけない」という大きなプレッシャーが生じます。しかし、がんによって痩せてしまう要因は、患者自身の食べる意欲や努力を超えたところにあります。そのため、痩せる原因が代謝異常に由来することをよく理解し、現状を受け入れられるように精神的なサポートを行うことも重要になります。また、できるだけ家族と一緒に食事をするなど、食事の持つ、栄養摂取以外の社会的側面にも目を向け、食べられない不安、痩せてしまう不安を抱かないように配慮することが大切だと考えられています。
<参考>
がんと免疫関係の基本(九州メディカル)
http://kyusyu.lohasmedical.jp/immunity/10-7.html
執筆:斉藤雅幸(Mocosuku編集部)
監修:坂本 忍(医学博士)
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