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がん治療の短期化 入院期間を短縮できる胸腔鏡手術
内視鏡を使った手術は、従来の開胸手術よりもはるかに小さな傷口で手術が可能です。肺がんや縦隔腫瘍に対して内視鏡を使って行う手術のことを「胸腔鏡手術」といいます。胸腔鏡手術では、直径5~12mm程度のポートと呼ばれる穴をあけ、そこから器具を挿入して手術を行います。手術は直接目で見て行うのではなく、胸腔鏡によって撮影された画像をモニターで確認しながら行います。
胸腔鏡手術の普及が進んでいるのは、傷口が小さいといった美容上の利点もさることながら、手術時に筋肉などの組織へのダメージを最小限に抑えられ、回復期間が短くて済むという理由が挙げられます。とくに、呼吸器の疾患においては、手術にともなうダメージによって肺機能が低下してしまう心配があるため、負担を抑えられる胸腔鏡手術のメリットは大きいといえます。手術後は、短い場合でも2~3日入院するのが一般的です。とくに全身麻酔を行った場合は入院が必要です。日帰り手術が可能なのは、全身麻酔を行う必要のない治療の場合です。胸腔鏡手術を日帰り手術で行うことは可能ですが、がん治療を日帰りで行うケースは稀であるといえるでしょう。
がん治療の短期化 歩行や食事をすぐに行う
手術後の安静の危険性が広く知られるようになりました。とりわけ高齢者の場合は、安静にしている期間が長引くことで、筋力が低下して寝たきりになったり、床ずれによって皮膚が傷つく褥瘡(じょくそう)が生じたり、食べ物を飲み込む機能が低下して誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)を引き起こしたりと、さまざまなトラブルが生じて生死に関わることもあります。安静による身体機能の低下のことを「廃用性症候群」といいます。現在では、手術の翌日にはしっかり歩行し、食事も行い、出来るだけ普段と変わらない生活を送ることが勧められています。
巨泉さんに関する報道にあるような、日帰りによるがん手術は現在のところ一般的なものではありません。しかし、手術後2~3日で退院といった具合に、がん治療の短期化が進められているのは事実です。手術にともなう負担を抑え、すぐに普通の生活をはじめることで早期回復を図るのが、現在のがん治療の流れとなっているのです。
<参考>
大橋巨泉、14日に手術していた…4度目がん転移
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20151025-00000237-sph-ent
執筆:斉藤雅幸(Mocosuku編集部)
監修:岡本良平医師(東京医科歯科大学名誉教授)
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