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被害者の意向でも「ひき逃げ」に該当
まさか(3)を選ぶ人はいないと思います。
実はこの例は、私が実際に見聞した事故です。
その際、自動車の運転者は(1)を選択しました。
運転者は被害者を後部座席に寝かせ、事故現場から一路、会議場へ。
被害者は国際会議場で「大切な発表」を済ませてから、2人は再び、運転者の車で事故現場に戻りました。被害者は、国際会議場に向かう途中は意識があったようですが、国際会議場から事故現場に戻る途中は熱にうなされていたようでした。
現場に戻ったのは15時過ぎです。ここにきて運転者は、ようやく110番に電話しました。事故現場に駆けつけた警察官は、事の次第を聞いて、運転者に向けてひと言いいました。
「あなたはひき逃げです」
被害者の意向で国際会議場まで行き、その後も被害者とともに事故現場に戻り、自ら警察にも通報したのに、「ひき逃げ」と言われたことに驚いた人もいるかもしれません。
しかし、運転免許を持っている人は、教習所で学んだことを思い出してみましょう。
交通事故の加害者には「警察への通報」「現場保存」「被害者救済」などの義務があります。この事例では、被害者と共に事故現場を立ち去っているので「現場保存」と「被害者救済」の義務を怠ったことになるのです。
被害者とともに事故現場から立ち去れば、事故直後の状況が変わってしまうため、「事故を隠ぺいした」と判断されてしまうのです。
また、この事例の被害者は事故直後は捻挫で済んでいたのですが、すぐに病院に行かなかったために、3か所の不全骨折(骨にヒビが入った状態)になってしまいました。
つまり、被害者の損害を拡大してしまったわけです。
セオリー通りの行動がベストなのか?
もし、運転者がセオリー通りの行動、つまり前述のクイズで言えば(2)を選択していたならば、少なくとも、「事故現場を隠ぺいした」という疑いはなく、被害者のケガも捻挫で済んだかもしれません。
一方で、被害者は「国際会議場で大切な発表がある」と言っています。
もし、運転者がセオリー通りの行動をとり、被害者が「大切な発表」ができなかったとしたら。今度は、「大切な発表ができないこと」に対する損害賠償請求をされる可能性があり、示談交渉が困難になったかもしれないのです。
このケースでは、運転者がセオリー通りの行動をしなかったことで、示談交渉はスムーズに運びました。
それと引き換えに、法的に課せられた処分は、数十日間の免許停止と数十万円の罰金刑という、大きなものでした。この場合、運転者はどうするのが正しかったでしょうか?
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