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執筆:影向 美樹(歯科医師)
歯並びは見た目にもわかりやすく、気にする人が多い一方で、噛み合わせの良し悪しは自分自身では気づかないこともあり、盲点になりがちです。
しかし噛み合わせの異常は私たちの体に様々な弊害をもたらす可能性があります。
慢性的な頭痛や体のだるさ、不眠などの症状に悩まされている方は、もしかしたら噛み合わせに原因があるかもしれません。
今回は噛み合わせが日常においてどのような働きをしているのか、また噛み合わせの異常がもたらす体への影響などをご紹介したいと思います。
噛み合わせは体にどんな影響がある?
人間にはなぜ左右対称に歯があり、その歯を上下で噛み合わせるのでしょうか?
まず1番最初に考えられるのは、食べ物を細かく砕き、すりつぶし、胃や腸で消化しやすくするという役割です。
「噛む」ことは生きていくうえで欠かせない基本中の動作でしょう。
しかし「噛む」という行為にはもう1つ重要な役割があります。
それは左右の歯を噛み合わせることで体のバランスを保つことです。
二足歩行の人間が正しい姿勢を保つためにはまず頭部の位置が重要であり、歯は左右の歯をしっかり噛み合わせることで、頭部の位置を支えています。
それでは噛み合わせが悪くなると体にどのような影響をもたらすのか、具体的にみていきましょう。
1.顎関節症
噛み合わせが悪いと顎の関節にも大きな負担がかかり、顎関節症の原因になります。顎関節症になると顎を動かすたびに音がなったり、痛みがでたりします。またひどくなると口が開かないなどの症状を引き起こします。
2.便秘などの胃腸障害
噛み合わせが悪いと食べ物をかみ砕く力が弱くなり、消化器官に大きな負担をかけてしまいます。そのため、これといった原因はないのに胃の調子が悪い、または慢性的な便秘などの症状に悩まされることが多くなります。
3.原因不明の頭痛や肩こり、腰痛など
噛み合わせが悪いと頭の位置がずれ、これによって体に歪みが生じます。慢性的な頭痛や肩こりは体の歪みによるものが多く、その原因が噛み合わせにあるケースは決して珍しくありません。
4.疲労や不眠
噛み合わせが悪いことで起こる体の歪みは、それ自体が体にとって大きなストレスとなります。そのストレスが自律神経のバランスも乱し、慢性疲労や不眠の原因になる場合があります。
正しい噛み合わせとはどういうもの?
「歯並び」と「噛み合わせ」は混同されがちですが、歯並びが良いからといって必ずしも噛み合わせも良いとは限りません。
それでは正しい噛み合わせとはどういう状態のことを示すかというと、以下のポイントを満たしていることです。
- ・真っすぐ噛んだ時、上下の歯がすべて噛みあう
- ・噛み合わせた時に前歯の中心が上下でずれていない
- ・犬歯から奥は上の歯1本に対し下の歯は2本噛みあう(1歯対2歯)
- ・下顎を前にずらしたとき、奥歯は噛みあわない(奥歯同士が当たらない)
- ・下顎を右、または左にずらしたとき、犬歯だけ噛みあい、奥歯は噛みあわない(奥歯同士が当たらない)
実際にこれらをすべて満たす理想的な噛み合わせを持つ人は少ないのですが、当てはまる項目が2つ以下である場合、噛み合わせに問題がある可能性が高いでしょう。
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