「年をとると、お酒に弱くなる」 これ本当?

Mocosuku(もこすく)
  • 「年をとると、お酒に弱くなる」 これ本当?

  • Mocosuku(もこすく)
医療資格者や専門家だけの記事を配信

「年をとると、お酒に弱くなる」 これ本当?

公開日時

お酒に弱いとは

 
「お酒に弱い」人は、アルコールの分解に必要な「アルコール分解酵素」がうまく働かない体質の人といえます。
 
アルコールの分解ができないため、血中のアルコール濃度がうまく下がらず、少量のお酒でも「頭が痛い」「気持ちが悪くなる」「心臓がドキドキする」「肌が赤くなる」などの不快な体調の変化が即座に出てきます。
 
ちなみにこの症状は、二日酔いの場合にも現れます。
 
 

加齢による身体の変化とお酒の関係

 
歳をとると身体が変化していきます。お腹まわりに脂肪がついたり、しわが増えたり、手足の筋力が落ちたりといった外見の変化もさることながら、体内でも筋肉量が落ちる一方で脂肪の量が増えるなどの変化が起きています。
 
また、胃や肝臓などアルコールの分解を担う臓器にも変化が見られ、アルコールの分解能力に変化が見えるようになります。
 
詳しく見ていきましょう。
 
 

飲酒後の血中アルコール濃度が高くなる

 
皮膚や筋肉には70~80%の水分が含まれているのに対して、脂肪組織に含まれる水の割合は10~30%程度とかなり低くなります。
 
ですから、加齢によって筋肉が減り脂肪が増えると、身体全体の水分割合も減少をしていくことになります。
 
アルコールは体内では水に溶けやすいのですが、脂肪には溶けにくいという性質があります。そのため、同じ量のアルコールを飲んだとしても、若いときよりも飲酒後の血中アルコール濃度が高くなります。

 
 

胃のアルコール分解が悪くなる

 
先に述べたように、飲んだアルコールの20%は胃から吸収されます。加齢によって胃の粘膜が萎縮すると、胃の粘膜にある「アルコール脱水素酵素」というアルコールの分解酵素が失われ、胃のアルコールの分解が悪くなります。
 
 

肝臓のアルコール分解能力が低下する

 
肝臓では、長年脂肪が蓄積されると、肝臓が褐色に見える「褐色萎縮」を起こします。これによって、肝臓の働きが弱くなり、アルコールの分解能力も落ちてきます。
 
 
以上の点から、ヒトは年をとると、“お酒に弱く”なってしまうのです。
 
「若いころより飲めなくなった・・・」と思われたら、これまでより量を減らし、かわりにお酒の質を楽しまれるのがいいかもしれませんね。

 
 
【参考】
樋口 進ほか『健康日本21推進のためのアルコール保健指導マニュアル』社会保険研究所、 2003年。

 
 
<執筆者プロフィール>
井上 愛子(いのうえ・あいこ)
保健師・助産師・看護師。株式会社とらうべ社員、産業保健(働く人の健康管理)のベテラン

 
<監修者プロフィール>
株式会社 とらうべ
医師・助産師・保健師・看護師・管理栄養士・心理学者・精神保健福祉士など専門家により、医療・健康に関連する情報について、信頼性の確認・検証サービスを提供

 

スポンサーリンク

先週よく読まれた記事

ヨガはどうしてカラダに良いの? 医学的に掘り下げてみよう

執筆:吉村 佑奈(保健師・看護師) 医療監修:株式会社とらうべ 昨今のヨガブームにより、趣味としてヨガを楽しまれている方も多いのではないでしょうか。 「なんとなく健康に良さそう」というイメージの強いヨ...

不眠症ならぬ「過眠症」をご存じですか? 症状や原因とは

執筆:吉村 佑奈(保健師・看護師) 医療監修:株式会社とらうべ あなたは自分の睡眠に満足していますか? 睡眠の悩みと聞くと、多くの方が思い浮かべるのは「不眠症」でしょう。 しかし、「過眠症」で悩んでい...

朝起きたら首が… やっかいな「寝違え」の原因と治し方

執筆:南部 洋子(助産師・看護師・タッチケア公認講師) 医療監修:株式会社とらうべ 「朝起きたら首が痛い・・・寝違えたかも!?」 このような経験、どなたも一度はあるでしょう。 そもそも寝違えはどうして...

冷え対策に、「温活」をはじめよう!

執筆:吉村 佑奈(保健師・看護師) 医療監修:株式会社とらうべ 婚活、妊活、終活など、最近は「〇活」というコトバがよく使われています。 「温活」もそのうちのひとつで、今や書籍やインターネットなどあちこ...

「失神」と「睡眠」の違い どこに注目すればいい?

執筆:南部 洋子(看護師) 監修:坂本 忍(医師、公認スポーツドクター、日本オリンピック委員会強化スタッフ) 「失神」と「睡眠」の違い、見た目ではなにがどう違うのか、わかりませんよね。 例えば、飲み会...

つった! 寝ていたら足がつるのはどうして?対処法は?

執筆:山村 真子(看護師・西東京糖尿病療養指導士) 夜寝ている時、突然足がつってしまい、激痛で目が覚めた! そんな経験をされた方、いらっしゃいませんか? 突然起こる足のつり。どうしてこのようなことが起...

働く人に増えている「適応障害」 原因となる3つのパターン

執筆:山本 恵一(メンタルヘルスライター) 医療監修:株式会社とらうべ 環境にうまくなじめないことから、落ち込んだり、意欲や自信を喪失したり、イライラして怒りっぽくなったり、体調面が悪くなったり、場合...

【アルコール】新着記事

食後の運転は大丈夫? アルコールが含まれるチョコやケーキ…

食後の運転は大丈夫? アルコールが含まれるチョコやケーキ…

執筆:山本 ともよ(管理栄養士・サプリメントアドバイザー・食生活アドバイザー) 医療監修:株式会社とらうべ 「飲んだら乗るな。乗るなら飲むな」 運転をする人もしない人も、誰しも肝に銘じている言葉でし...

2019/01/25 18:30掲載

宴会前に要チェック! お酒による頭痛の原因と対策

宴会前に要チェック! お酒による頭痛の原因と対策

執筆:山本 ともよ(管理栄養士・サプリメントアドバイザー・食生活アドバイザー) 医療監修:株式会社とらうべ お酒を飲んだ後や翌日、頭がズキズキ痛い…この経験、多くの人は身に覚えがあるのではないでしょうか。...

2018/12/14 18:30掲載

口臭や体臭… 寝起きがキツイのはどうして?

口臭や体臭… 寝起きがキツイのはどうして?

執筆:井上 愛子(保健師・助産師・看護師) 医療監修:株式会社とらうべ 日本人はにおいにとても敏感、過剰反応などという論調も見られる昨今… そうは言っても、自分の臭いや家族の体臭、口臭は誰しも少なか...

2018/11/25 18:30掲載

「アルコール依存症」の基礎知識。 診断基準と段階的な治療

「アルコール依存症」の基礎知識。 診断基準と段階的な治療

執筆:藤尾 薫子(保健師・看護師) 医療監修:株式会社とらうべ 「依存」という言葉は“何かに寄りかかる”という意味です。 お互いに依存し合う「もたれあい」は適度であれば美徳と捉えることもでき、協力や...

2018/10/05 18:30掲載

風が吹いただけでも痛い「痛風」 今から予防できること

風が吹いただけでも痛い「痛風」 今から予防できること

執筆:藤尾 薫子(保健師・看護師) 医療監修:株式会社とらうべ 突然足の親指の付け根などの関節が赤く腫れ、激しい痛みに襲われるのが「痛風」の特徴です。 これは発作的に起こる症状で「痛風発作」ともいい...

2018/06/01 18:30掲載

いつもと違う二日酔いはメタノールが原因? 原因別に対策を

いつもと違う二日酔いはメタノールが原因? 原因別に対策を

執筆:藤尾 薫子(保健師・看護師) 医療監修:株式会社とらうべ 楽しいお酒の席…しかし、飲み過ぎにつきものの「二日酔い」になるとやっかいです。 飲み過ぎが原因になると知りつつ、ついつい深酒をして辛い...

2018/02/04 18:30掲載