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執筆者:石村 衛(ファイナンシャルプランナー)
年金制度への不透明感からいわゆる「下流老人に陥ってしまうのではないか?」と懸念をされる方も多いと思います。
老後資金の準備として「定年までに数千万円から1億円は準備が必要」との記事やコメントがネットや雑誌に掲載されることがあります。
果たして一体いくら貯蓄があれば、安心できるでしょうか?
結論から記載すると「万人にあてはまる安心できる老後資金は存在しない」というのが筆者の回答です。
理由1:「生活レベルは、各家庭により大きく異なる」
現在の毎月の生活費が、20万円と30万円の家庭ではそもそも生活レベルが異なるため、同じ土俵で論じることはできません。
また、家庭によっては、退職時点で「子どもの教育費負担が当面続く」、あるいは退職後も「住宅ローンの返済が続く」といった要因も考えられます。
さらに、退職したからといって上記で挙げた要因が無くとも、
それまで享受してきた生活レベルを「望んで引き下げたい」と思う人はおらず、将来の生活レベルの予測はナンセンスです。
理由2:「老後資金を多額に貯められたとしても結局使えない」
公的年金だけでは、老後の生活費は賄えない可能性が高く、貯蓄を取り崩さざるをえません。
そのための老後貯蓄ですので論理的には矛盾はありませんが、感情的には、貯蓄残高が徐々に減少していくので新たな不安⇒恐怖が芽生えます。
明確な根拠が無くとも残高が一定金額を下回り始めると、貯蓄を取り崩すことに恐怖を覚えてしまい取り崩せなくなってしまいがちです。
理由3:「公的年金制度の破綻は誰も望んでいない」
「年金破綻!」というショッキングな話題をネットや雑誌、新聞、テレビ番組とあらゆるメディアが取り上げます。
それを見て・聞けば、「本当に大丈夫か?」と不安になるのは当たり前の感情だと思います。
これらの記事は、「何もしないで手をこまねいていると本当に破綻しかねない!」と警鐘を鳴らしているのです。
破綻させないためには、「年金額の引き下げ」「受給開始年齢の引き上げ」「年金保険料の引き上げ」などのうちどれか、
あるいは全部を「実施せざるを得ない」という痛みは避けられません。
唯一の解決策は、主権者たる国民が実現可能な政策を実行する政党・政治家に選挙で1票を投じることです。
従って、破綻を前提に老後資金を蓄えようとするのは非現実的ではないでしょうか?
理由4:「インフレの予測は不可能」
インフレが起こると現在価値のお金は、徐々に目減りします。
つまり、現時点で老後資金の目標額を定めても、インフレが継続的に起こればその目標額自体の妥当性がなくなってしまいます。
「デフレ脱却!」を合言葉に政府・日銀は物価上昇目標を安定的に2%の達成を目標に掲げています。
幸か不幸か?今のところは、その思惑通りに進んでいないようですが、意図的あるいは意図に反したインフレの可能性は皆無ではありません。
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