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断酒 までの道のり:「お酒を飲むこと」を禁止されなかった
今回、Sさんが受診した精神科の医師は「時間はかかると思うが、じっくり治していきましょう」と言って、Sさんを受け入れてくれました。Sさんは自分が毎晩深酒をしてしまうことを医師に告げ、飲酒時に記憶が頻繁になくなることも話しました。
医師は「薬を飲んだら、お酒は絶対に飲んではいけません」と注意をしましたが、Sさんが連続飲酒(起きてから寝るまでずっと飲み続けるアルコール依存の症状)をしていないことなどから、Sさんに「アルコール依存症」という診断はしませんでした。それどころか、医師はSさんに「どうしてもストレスが溜まったときは、すこしぐらい飲むのもいいでしょう」とまで言ったそうです。
断酒 までの道のり:飲酒量のコントロールができない
今度は処方された向精神薬があっていたのか、Sさんの精神状態はすこしずつ落ち着きを見せはじめ、以前のように突然泣き出したり、すぐに激昂したりといったことは少なくなっていきました。
しかし、それも「お酒を飲まなければ」の話です。
最初の数日こそ、ビールなら500ml程度、お酒なら二合ぐらいという「適量」を守って飲んでいたSさんでしたが、すぐに飲酒量のコントロールができなくなり、前とおなじように「酔いつぶれるまで飲む」という状態に戻ってしまいました。そして、酔っぱらうと感情の制御ができなくなるため、イスを投げたりテーブルをひっくり返したりといった大暴れもふたたびするようになりました。
このようなSさんの様子を見ていた妻のKさんは、もはや「Sさんと一緒に住むことはできない」と思い、別居を決意しました。そして、Sさんが「以前の同僚に誘われた」といってお酒を飲みに出かけているあいだに、Kさんは家を出て実家に帰ったのでした。
(次回に続く)
参考:全国の配偶者暴力相談支援センター一覧(内閣府)
http://www.gender.go.jp/e-vaw/soudankikan/pdf/center.pdf
※本文は実話をもとに脚色を交えて構成しています。実在の人物・団体とはいっさい関係がありません。
<執筆者プロフィール>
井澤佑治(いざわ・ゆうじ)コラムニスト
舞踏家/ダンサーとしての国内外での活動を経て、健康法・身体技法の研究、高齢者への体操指導、さまざまな障がいや精神疾患を持つ人を対象としたセラピー、発達障害児の療育、LGBTの支援などに携わる。
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