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断酒とうつと治療 : 「うつ」と「アルコール依存」の関係とは
また、クリニックの院長は、Sさんの不安定な精神状態とアルコールの関係について、Sさんにわかりやすく解説してくれました。
院長がいうには、「うつ」と「アルコール依存」は、精神医療の現場においては「ニワトリと卵」にたとえられるほど密接な関係があるといわれているそうです。
また、アルコールには精神を興奮・高揚させる作用があるため、アルコールの作用が切れたときには、ちょうど振り子が反対側にふれるように、精神的に沈みこんでしまうケースもよく見られるとのことでした。さらに院長は、アルコールが「寝つきをよくする」というのは誤解であり、飲酒時は眠りが浅くなることが多いため、結果的に睡眠不足や不眠による「うつ」を引き起こす可能性もあることをSさんに説明したのでした。
断酒とうつと治療 : コントロールは難しい
一般的に、「アルコール依存」の治療において「お酒の量を減らして治療する」という選択はないといわれています。これは、アルコールに対する依存傾向のある人の場合、自分の意志で飲酒量をコントロールしつづけることが非常に難しいためだそうです。
「ちょっと1杯」のつもりが、泥酔するまで飲んでしまうというのは酒飲みに共通の心理といえるでしょう。
こうした理由から、クリニックの院長はSさんに対して、現在のツラい精神状態を脱出するには「2度とお酒を飲まない」という覚悟が必要なことを告げたのでした。
(次回に続く)
※本文は実話をもとに脚色を交えて構成しています。実在の人物・団体とはいっさい関係がありません。
<執筆者プロフィール>
井澤佑治(いざわ・ゆうじ)コラムニスト
舞踏家/ダンサーとしての国内外での活動を経て、健康法・身体技法の研究、高齢者への体操指導、さまざまな障がいや精神疾患を持つ人を対象としたセラピー、発達障害児の療育、LGBTの支援などに携わる。
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