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炎症性腸疾患の治療
炎症性腸疾患の治療では、潰瘍性大腸炎、クローン病ともに、食事療法や薬物療法、外科手術などが用いられます。大腸の全摘出のような大規模な手術が行われるのは潰瘍性大腸炎です。以下、食事療法と手術について詳しく見ていきます。
【食事療法】
炎症性腸疾患では、極めて大事なのが食事療法です。食事に対する免疫反応という説からすると、抗原性を作らない食事=タンパク質を含まない食事は、症状を抑えると予想されます。また、脂肪も腸管の炎症反応を促進させるため、推奨されません。このため、タンパク質と脂肪を含まない「エレンタール」という栄養剤を用います。これに加え、炭水化物中心の食事を摂ります。最近の考え方としては、脂肪がすべて悪いわけではなく、魚の脂肪は炎症を抑えるとされます。
【手術】
潰瘍性大腸炎の患者は、10年以内に2%、30年以内に18%の人にがんを発症すると言われています。がんを発症した場合や、がんに近い組織が見つかった場合は外科手術が選択されます。また、何年にもわたって炎症を繰り返している場合、出血のため貧血が進行して体力が落ちてしまうため、手術に踏み切ることになります。手術にはいくつか方法がありますが、大まかに言うと、大腸をすべて摘出し、直腸の代わりに便をためるポーチ(嚢)を小腸で作ってそれを肛門につなぎます。数回に分割して手術を行いますが、手術の難易度が高く、熟練した医師の技術を要します。大腸を全摘出しても、2〜4週間程度で通常の生活に戻ることができ、軽い運動も可能です。仕事にも復帰できるでしょう。大腸がないことで食べてはいけないものも特にありません。ただし、お酒や香辛料などの刺激物の量によって、排便回数が多くなるようです。なお、クローン病では基本的に食事療養や薬物療法が用いられますが、腸に潰瘍ができたり穴が開いたりした場合にはその部分を切除する手術を行います。
悪化させないためにはストレスに注意
炎症性腸疾患は、過労や精神的ストレスで悪化します。寛解状態で安定していたのに、仕事がうまくいかず残業などが続くと悪くなることはよくあります。しかし、仕事の問題が解決した途端、うそのように状態がよくなることもあります。結局のところ、体のことを中心に考えると、あまり仕事を頑張り過ぎず、割り切ってみるのもひとつの方法でしょう。北川さんには、身体に負担のかからない範囲で活躍してほしいですね。
執筆:南部洋子(看護師)
監修:岡本良平医師(東京医科歯科大学名誉教授)
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