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すい臓がんの治療 :術前・術後の化学療法
すい臓がんは手術できるケースが少ないことにふれました。ここでいう「手術できる」とは、技術的に腫瘍を切除可能であるという意味だけではありません。手術を行ったことで、がん細胞が散ってしまうリスクはないか、また、その手術を行うことで生存率や生活の質(quality of life)の向上を見込めるかどうかが考慮されます。切除はできてもリスクが高い、あるいは、メリットが少ないという場合は、手術を行うことはできません。
すい臓がんの外科手術を行うには、遠く離れた臓器への転移がないこと、すべてのがん細胞を切除可能と予想できること、そして、肝臓や腸管に栄養や酸素を送る腹腔動脈や上腸間膜動脈に接していないこと(摘出が困難になるため)、が条件となります。少しでも手術できる可能性を高めるために行うのが術前化学療法です。これは手術を行う前に薬剤による化学療法を進め、がんが小さくなってから切除するというもので、5年生存率の向上が期待されています。また、術後にも転移の可能性を減らすために補助化学療法が行われます。
すい臓がんの治療 :塩酸ゲムシタビンとS-1
すい臓がんの化学療法には、2001年に保険適用になった塩酸ゲムシタビンと、2006年に保険適用になったS-1という薬剤が用いられます。塩酸ゲムシタビンは点滴、S-1は内服薬です。これらの薬剤は消化器や皮膚への副作用や、骨髄で血液を造る機能が抑制される骨髄抑制といった副作用をともないます。なかでも重篤なのは間質性肺炎で、風邪などをきっかけに症状が悪化すれば生死にかかわります。咳や息切れといった間質性肺炎に特有の症状がないかどうか細心の注意が求められます。
監修:岡本良平医師(東京医科歯科大学名誉教授)
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