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重症の火傷に人工皮膚を 用い、敗血症による死亡を防ぐ
熱傷の怖いのは、傷口(熱傷創といいます)に細菌が繁殖するところです。血液中に細菌が入り込んで重篤な全身症状を引き起こすことを敗血症といい、熱傷における死亡原因となっています。このとき、人工皮膚が重要な役割を果たします。細菌が繁殖する前に人工皮膚を移植することで敗血症による死亡を食いとめ、治癒へと導くのです。
皮膚は5~6倍に伸びるので、全身の30%程度までは自分の皮膚の移植によって治療することができます。人工皮膚を必要とするのは、30%以上の広範囲に熱傷を負った人です。
人工皮膚は最終的に自分の皮膚に置き換える
熱傷が広範囲に及び、自分の皮膚では足りない場合、一時的に人工皮膚で覆います。ここで用いる人工皮膚は永久的に自分の皮膚の代わりになるものではなく、あくまでも敗血症を防ぐために治療の一段階として使われます。順次、自分の皮膚を採取して置き換えていきます。皮膚を採取した部位が治癒したら再び皮膚を採取する、という行程を繰り返し、1~2か月かけて移植した人工皮膚をすべて自分の皮膚に置き換えます。
今回の人工皮膚の提供に関連して、赤十字社の槙島敏治医師は、東日本大震災で支援してくれた台湾への「恩返し」であると語ったといいます。人工皮膚を必要とするのは、30%以上の広範囲に2度以上の熱傷を負った重症の患者さんです。文字通り命を救うための支援であったことがわかります。
<参考>
日赤、人工皮膚を提供=遊園地事故の死者は3人に-台湾
http://www.jiji.com/jc/eqa?k=2015070600808&m=rss
熱傷と人工皮膚移植・スキンバンク(金沢医科大学病院)
http://www.kanazawa-med.ac.jp/~hospital/post-19.html
執筆:斉藤雅幸(Mocosuku編集部)
監修:坂本 忍(医学博士)
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