岩手 中学生の自殺 事件

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岩手 中学生の自殺 事件

公開日時

いじめ(暴行)の事実を担任が把握している中で、ショッキングな 中学生の自殺 事件が岩手で起こりました。
 
 

中学生の自殺 担任・校長に当事者意識が見られないケース

 

学校で起こっている暴行事件なのですから、学校には間違いなく対応義務がありました。しかし、何も成されないままに、尊い命が犠牲になりました。
 
しかも、暴行の事実に対して校長は「(暴行があれば)担任が報告しているはず。報告がないから、暴行はなかった。」と、当初は他人ごとのような対応でした。
 
さらに、他の生徒らには「言うな」と事件についての箝口令を敷いたとも言われています。「事実の調査中」という言い分かと思われますが、ここまでの経緯を考えると隠ぺい体質があったと思わざるを得ません。
 
もはや学校も加害者です。
教育評論家の尾木直樹さんも学校への強い憤りを表しています。
 
この事件で異常なのは、自殺という最悪の事態に至るまで、そして各方面から糾弾を受けるまで、担任にも校長にも当事者意識が見られなかったという事実です。
 
たとえば、担任と被害生徒さんの交換日記(生活記録ノート)が公表されています。
 
暴行の辛さを訴えても「解決したの?」と他人ごとです。
「氏(死)んでいいですか(たぶんさいきんおきるかな)」という自殺予告にも「どうしたの?テストのことが心配?クラス?(…以下略)」と暴行の存在をスルーするかのように対応しています。
 
本人とも深く話し合っていない、ご両親にも相談していない。
完全に「傍観者(ぼうかんしゃ)」です。
 
この教師はなぜ傍観者になってしまったのか、この教育現場では今何が起こっているのか、考えてみましょう。
 
 
暴行事件を目の当たりにした人が傍観者になってしまう条件は次の3つです。
 
1)多元的無知 暴行をやめさせようと行動する人がいないので、緊急性がないと考える
 
2)責任分散 他の人と同調した行動を取ることで、自分の責任が分散されて非難されることはないと考える
 
3)評価懸念 何か行動を起こすと、周囲からネガティブに評価されるかもしれないので何もしない
 
 
3つの条件が成立してしまった背景をひとつ一つ考えてみましょう。
 
「暴行をやめさせようとする人」は実際にはいました。
被害生徒さん本人です。
 
生活記録ノートには「(加害者が)やめてといってもやめない」と訴えています。やめさせようとする意思を示しているのです。
被害生徒さんを「人」と見ていれば多元的無知は成立しません。
 
「他の人と同調…」担任教師が同調したのは被害生徒さんではありませんでした。
被害生徒さんに同調していれば、傍観はしないはずです。
誰に同調したのでしょうか。校内での暴行を隠ぺいする学校の雰囲気でしょうか?
 
「周囲からネガティブに…」暴行事件に対応したら、隠ぺいしようとする「周囲(他の教師ら)」にネガティブに評価されるのでしょうか?
 
恐ろしいことですが、担任教師が意識していた「人」と「周囲」は被害生徒さんではないことは明白です。教師が生徒にコミットしていないのです。
 
担任教師の傍観から「面倒なことは増やしたくない」という校長をはじめとした教師の雰囲気が透けて見えてきます。
このような雰囲気を作り上げた校長、そして岩手県と矢巾町の教育行政は事態を重く受け止めなければなりません。
 
もちろん、担任教師の意識の低さも問わなければなりません。
しかし、意識が低いのは担任教師だけなのでしょうか。
 
校長もそうですが、半ば名誉職のようにされている教育長、教育委員会のあり方、教育行政担当者の意識から変えるべきでしょう。
 
筆者は現在の教育行政は混乱しているように感じます。
混乱を解消しようと新規事業を乱造しているわけですが、業務負担の増加がストレスになっているようです。
ストレスから教師同士のいじめも頻繁で、休職者も相次いでいます。
 
事業は開催実績と分厚い報告資料という「実績」は稼げます。
ですが、私たちが本当に欲しい実績は子どもに懸命になってくれる「センセイ」のいる学校です。子どもの未来です。
本当に意味のある教育行政を実現するために地域で何ができるのか、私たち一人一人が考えなければなりません。
 
こんな悲劇はもう見たくありません。
みなさまの地域でも、ご一緒に考えていただけると幸いです。
 
 
 

sugiyama_prof

 

<執筆者プロフィール>
杉山 崇
神奈川大学人間科学部/大学院人間科学研究科教授。教育支援センター副所長、心理相談センター所長(15年4月から)。臨床心理士、公益社団法人日本心理学会代議員、キャリアコンサルティング技能士。
公式サイトはこちら⇒ http://www.sugys-lab.com/

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