(※記事中の語句のリンクは、その語句について詳しく解説したMocosuku姉妹サイトが開きます)
脳震盪後症候群の危険性
脳震盪後には身体的、認知的なさまざまな症状が出ます。これを「脳震盪後症候群」といいます。めまいや集中力低下は受傷後2~3日以内の早期に生じやすい症状です。他にも頭痛、頸部痛、睡眠障害、光への過敏、耳鳴などが現れます。また、慢性的な疲労感は脳震盪後症候群の大きな特徴のひとつです。
脳震盪後のスポーツへの復帰は慎重に判断した方がよさそうです。米国神経学会(AAN)が2013年に発表した『エビデンスに基づくスポーツ脳震盪評価・管理ガイドライン』は、「脳震盪が疑われる選手は、直ちに競技参加を中止すべきである」としています。また、症状が消えてから競技に参加する際は、徐々に再開することが推奨されています。高校生以下の年齢の選手は回復に時間がかかるため、競技復帰に向け、より慎重な管理が必要とされます。
スポーツにおける脳震盪の扱い
プロスポーツから子どもたちの行うスポーツまで、運動中の脳震盪は決して珍しい出来事ではありません。以前は、「よくあること」として軽視されることもありましたが、死亡や重い後遺症に発展する可能性が知られるようになった現在では、より慎重な対応が一般的となっています。脳震盪の影響でアルツハイマーや認知症、ALS(筋萎縮性側索硬化症)などの発症率が上がるとの報告もあります。
脳震盪に対する慎重姿勢はスポーツ界の流れといえますが、一方で、「頭を打ったのにがんばる姿」は美談になりやすいという危うい側面を持っています。競技参加の中止は当事者にとっても、周りの人たちにとっても難しい選択といえます。正しく休む、正しく休ませる、勇気ある決断が求められることもあるでしょう。
<参考>
青木“脳しんとうDL入り”も… 9日に頭部死球で途中交代 (スポニチアネックス)
http://www.sponichi.co.jp/baseball/news/2015/08/14/kiji/K20150814010932690.html
執筆:斉藤雅幸(Mocosuku編集部)
監修:岡本良平医師(東京医科歯科大学名誉教授)
スポンサーリンク