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「くも膜下出血」とは
くも膜下出血:「くも膜」とは
脳は人体の中でも最も柔らかい器官です。ですから、外側から柔軟性のある髪の毛、頭皮、骨の中でも最も硬い頭蓋骨、髄膜という4つの層で守られています。
髄膜は、頭蓋骨と脳の間にあり、脳を守っていますが、頭蓋骨のすぐ下に、硬膜、次にくも膜、そして軟膜という3層で出来ています。
硬膜は、頭蓋骨に、軟膜は脳に密接しています。くも膜は、硬膜と軟膜の間にあって、くも膜と軟膜の間には、くも膜下腔という空間があります。
くも膜を含む髄膜の間には、頭蓋骨内の圧力を一定に保つために、脳脊髄液が入っています。
頭部の衝撃を緩和する緩衝材という役割です。髄膜は、脳脊髄液を吸収・循環させる働きをしています。
くも膜下出血とは
年間約2万人の人が発症しており、男性より女性に多く、加齢に伴って発症率は増加しています。発症すると、3分の1が死亡、3分の1は障害が残り、残りの3分の1は、社会復帰できるほど元気になる、というように分かれます。死亡率は、男女差はそれほど大きくありません。
くも膜下出血とは、くも膜下腔に出血した状態の総称を指しますが、出血の原因のほとんどが脳動脈瘤の破裂によるもので、40~50代に多いです。若者(30代)では、生まれつき持っている脳動静脈奇形があり、破裂するということもあります。また、頭部の外傷などからも起こります。
出血は、一瞬の間に起こり、頭蓋内圧が血圧と同じになるまで、出血し、突然死に至ります。
突然起こるのが特徴ですので、たとえ元気な人でも、くも膜下出血を起こす可能性があります。
くも膜下出血の症状にはどんなものがあるの?
特徴は、突然の激しい頭痛です。後頭部をバットで殴られようだった、という経験談をよく聞きます。これまで経験したことがないような強烈な頭痛です。その時どんな状態だったのかを鮮明に自覚していることが多いです。「だんだん頭痛がひどくなってきた」という場合は、くも膜下出血を起こしていることはほとんどありません。「突然ひどい頭痛!」というのが特徴です。
発症前の前駆症状として、ズキズキする痛みで吐き気を伴う場合もあります。
重症の場合、出血が止まらずに圧が高い状態が続くと、脳自体に損傷が加わって、意識が戻りません。そのまま倒れて呼吸が止まってしまうことも多くあります。また、脳内出血を伴うこともあり、言語障害や手足の麻痺が残る場合もあります。
さらに、脳血管攣縮というものを起こすことがあります。これは、くも膜下出血後4~14日間に、脳の血管が細くなって、脳梗塞を起こすというものです。
中等度では、一瞬意識がなくなりますが、その後戻ります。軽症の場合、頭痛が続いて、「何だかおかしい」と感じながら、歩いて病院に行き、発覚することもあります。
くも膜下出血の原因とは
喫煙、高血圧、経口避妊薬などが危険因子としてあげられますが、必ずしも高血圧の人に起こるとは言えません。発症は、排便している時、性交時、緊張している時、重労働中などが40%ほどで、力んだ時に起こることが多いのですが、普通の状態でも35%ほど起こるほか、10%位は睡眠中でも起こることもあります。
また軽症だった場合でも、約20%は、最初に出血してから6時間以内に、再破裂が起き、大きな死亡原因にもなっています。
くも膜下出血の診断と治療
くも膜下出血の診断
頭痛が起きた当日であれば、頭部CTスキャンによってすぐわかります。しかし、出血が少量だったり、発症して数日経過した場合は、CTではわからないことがあります。その場合は、腰椎穿刺で髄液を採取して、血液が混じっていることが確認されると診断がつきます。そのほかMRIで診断することも可能です。また、脳血管を写しだすための、脳血管撮影を行います。
くも膜下出血の治療
脳の病気ですが、全身に影響を及ぼします。そのため、呼吸状態や、心臓の循環器など、全身状態を安定させる必要があります。そして、再出血予防を行います。もし、昏睡状態で全身状態が悪い場合は、手術治療はできません。
手術が行われる場合は、開頭によるクリッピング手術を行います。これは動脈瘤をクリップで閉鎖する方法です。
くも膜下出血の再発を防止する方法って?
くも膜下出血は1年以内に再発する確率は32%、5年以内では55%、10年以内では70%の確率で再発するといわれ、脳卒中のなかでも再発率が高いのが特徴です。くも膜下出血の8割以上は動脈瘤が破裂したことが原因です。破裂させないためには再発予防の手術が望まれます。再発予防の手術は主に次の2種類です。
クリッピング術
ひとつは、頭蓋骨に穴を開けて行う「開頭術」という手術という手術です。この手術では、洗濯ばさみのような医療機器を使って、破裂する恐れのある動脈瘤を直接はさみます。こうすることで、出血しないように予防するのです。クリッピング術では、100%近く再出血を予防できるといわれています。開頭術なため、傷跡は残るものの髪の毛などで隠すことができます。
コイル塞栓術(そくせんじゅつ)
クリッピング術とは違い、頭蓋骨に穴をあけず、カテーテルを使って手術するのが「コイル塞栓術」です。これは、大腿動脈からカテーテルを挿入し、頸部の動脈からさらに細いマイクロカテーテルで動脈瘤内にプラチナ製のコイルを詰め込んで血管の破裂を予防します。傷口は小さくてすみますが、再び動脈瘤に血液が流れ込んでしまった場合は、再手術が必要になることがあります。
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