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子どもの不登校の実態 (2)
「無気力」という理由
上記の調査によると、不登校の理由は、「いじめ」など友人関係に関するもの、家庭の事情、教師との関係をめぐる問題などさまざまですが、なかでも目立つのが「無気力」という回答です(小学校23.0%、中学校26.7%)。これを「具体的な理由はないが、学校には行けない」と解釈すると、学校というシステムそのものに適応できない子どもが増えていることも考えられます。
近年、ADHDや自閉症スペクトラムといった「子どもの発達障害」が問題となっていますが、こうした発達障害と診断される子どもの場合、集団生活が苦手で学校に適応できないケースも多くみられます。しかし、「集団生活に馴染めない=学力に問題がある」というわけではなく、適切な環境さえあれば、その能力を伸ばすことのできる可能性がある子どもが多いことも事実なのです。
こうした「集団生活が苦手」な子どもたちや、深刻な「いじめ」に悩む子どもたちとって、学校以外の「学びの場」であるフリースクールは貴重な存在といえます。
子どもの不登校の実態 (3)
フリースクールの現状における問題とは
フリースクールはあくまで民間の教育機関であるため、「学校への復帰」や「子どもたちのケア」など目的によってさまざまなタイプがあります。また、スクールの規模も、ビルやマンションの一室で運営されるものや、共同生活を主体としたもの、あるいは東京シューレやシュタイナー学校のように、一般の学校に近い形態を取るスクールもあります。こうしたスクールの幅広さ・多様さが、今回の法案見送りの理由にもなったように「玉石混合で、どう認定するかが問題」ということにつながってしまっているのも実情です。
現在のフリースクールの問題点としては、「どのようなスクールがあるのか?」ということが十分に周知されておらず、施設の信頼性が確保されていないことや、学校を選ぶ際に情報を得るのが難しいことなどがあげられます。また、フリースクールはどの地域にもあるわけではないことから、こうした「受け皿」のない地域の子どもたちが「どこで学べばいいのか?」ということも問題となっています。
冒頭に述べた法案は、次の国会での成立を目指すとのことですが、こうした法整備をきっかけに、上記のような問題が解決されることが、「学びの場」について悩む児童・生徒と親たちにとっては、望ましいことといえそうです。
<執筆者プロフィール>
井澤佑治(いざわ・ゆうじ) ライター
通販メーカーのコピーライターとして、健康食品などの広告を数多く手がけたのちに、ダンサーとして独立。国内外で公演やワークショップ活動を展開しつつ、身体操作や食事療法などさまざまな心身の健康法を探究する。現在はダンスを切り口に、高齢者への体操指導、障がいや精神疾患を持つ人を対象としたセラピー、発達障害児の療育、LGBTの支援などにも携わっている。
<参考>
http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/List.do?bid=000001062614&cycode=0
(児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査 小・中学校の不登校 政府統計)
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