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保育と介護 (2)
公定価格によるところが大きい職種
もうひとつ共通点として挙げられるのが、保育にしても介護にしても、収入の柱は公定価格で決められている点です。たとえば、保育園等であれば一定の利用者負担とともに公的な給付金等により成り立っており、国により公定価格が定められています。介護も同様に公的な負担が中心となり介護報酬が定められています。
同様の仕組みは、保険診療報酬についても見られます。とりわけ高度な知識と技量を有する医師と収入レベルを同列で考えることは不適切であるとしても、公的な価格統制の仕組みで保育士・介護士の賃金が決まる要素が大きい以上、社会的ニーズが高まっている現状では保育士・介護士等の処遇改善は急がれていいはずです。
保育と介護 (3)
少しずつ始まっている改善
2015年4月より「子ども・子育て支援新制度」がスタートしました。その中には、「質の向上」を目指した処遇改善等加算という項目もあり、保育士の賃金向上を意識した公定価格の改定が予定されています。
また、介護報酬に関しても平成27年介護報酬改定に向けて「介護職員の処遇改善」を挙げており、一定の賃金改定はおこなわれる予定です。
しかし財源の問題があるにせよ、単年度改定の都度に待遇改善をうたうのではなく、せめて全業種平均の賃金に到達するまでを当面の目処として、「安定的な昇給を図り続ける」という約束された施策が求められます。
保育士さんにしても介護士さんにしても、生身の人間をお世話する仕事であり、精神的にも体力的にも厳しい状況下で仕事をしています。他の業種と比べて低賃金が続くようであれば、不人気業種が定着しまうことで人材の確保・育成が滞り、施設利用者へのサービス低下に直結しかねません。賃金が安定して上昇することが約束されていれば、「安心して働く」という動機に結びつきやすく、人材も育つのではないでしょうか。
※ 表の各職種は、厚労省:平成26年賃金構造基本統計調査(表番号2職種・性、年齢階級別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額)から企業規模10名以上・決まって支給する現金給与を12倍した値に年間賞与を加えて算出したものです。
http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/GL08020103.do?_toGL08020103_&tclassID=000001054146&cycleCode=0&requestSender=estat
※ 表の全産業計は、厚労省:毎月勤労統計(平成26年確報)より、事業規模5名以上の月間給与額の平均を12倍して算出したもの
http://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/monthly/26/26-2fr/dl/26fc01r.xls
<執筆者プロフィール>
石村衛(いしむら・まもる)
FP事務所:ライフパートナーオフィス代表ファイナンシャルプランニング1級技能士(CFP)東洋大学卒業。メーカー勤務の後、FP事務所:ライフパートナーオフィスを横浜市戸塚区に開設。地域に根ざしたFP活動を志向し、住宅ローン、不動産・証券投資、保険、貯蓄・など一般家庭のお金にまつわる様々なアドバイスを行っている。 お金に係わる出前授業を小・中・高校で実施。また、高等学校の保護者会などで進学費用や奨学金・教育ローンの講演多数。東京都金融広報委員会 金融広報アドバイザーとして活動中。
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