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「男の涙」と「女の涙」の差は昔からあった?
でも、私たちの経験を振り返ってみると、泣くのはネガティブな場面に限ったことではありません。ポジティブな感情のときにも泣くことがあります。うれし涙を流した、感動して泣いた、ホット安心したら涙が出てきたなどです。
また、男女の性差との関連では、女性は感情表出が奨励され、男性には逆に冷静であること(とくに「涙を見せない」)が期待されてきました。「男は一生に三度しか泣くな」という説教もありましたね。もっとも「三度」には諸説あるようですが・・・。
逆に平安時代、男性はよく泣いていたという記述もあり、現在、若い男子が、かつてに比べて「よく泣く」ようになっているのも、あながち日本人のDNAとしては、突然変異ではないのかもしれません。
涙の多義性:誰だってわざと泣ける!?
ともあれ、涙や泣くことに対しては女性の方が自在です。
その結果、悲しい時、悔しい時、うれしい時、感動した時など、男性が理解可能な場面で女性が泣くことはしばしば起こります。
それだけではなく、ただ泣いている、何だか涙が出てきたといった状況さえ、女性にはあって、しかも女性同士では了解されています。
加えて、俳優や役者をはじめ女性にも、涙をコントロールできる技術が開示されていて、泣くことや涙は、自然にそうなってしまう現象であるだけでなく、わざと泣くことも可能です。
これを逆手にとって、女性が男性に甘えたり、逆らったり、逃げたりすることに涙が利用されることもあるのです。泣くことの意味は、まさに多様です。
とはいえ、辛かったり苦しい時と、嬉しかったり感動している時の涙では、涙の性質が違うとも言われます。
交感神経が働いたいわゆる「ストレス」涙は、ナトリウムなども多く含まれていてショッパイと言われますし、いい映画を見て感動した時のような「副交感神経」主導の涙は、ハラハラ流れサラサラしているとも言われます。
感情であると同時に生理現象でもある「泣く」ことと「涙」。このストレス過多時代にあっては、これを統制するよりも、自然に流れるに任せる方が健康的ではないでしょうか。
<執筆者プロフィール>
山本恵一(やまもと・よしかず)
メンタルヘルスライター。立教大学大学院卒、元東京国際大学心理学教授。保健・衛生コンサルタントや妊娠・育児コンサルタント、企業・医療機関向けヘルスケアサービスなどを提供する株式会社とらうべ副社長
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