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マイコプラズマ肺炎
マイコプラズマは、市中肺炎の原因菌として、肺炎球菌に次いで、多い小型の微生物です。10~30代の若年成人に好発するのが特徴です。
乳幼児にも感染しますが肺炎になることは少なく、風邪や上気道炎で終わることが多いものです。5歳以上になると肺炎症状が出てきます。感染後、免疫は持続しないので、また感染します。予防接種は、現在のところありません。
潜伏期間は、2~3週間程度です。
症状は、発熱で始まり、1~2日遅れてせきが出始めます。だんだんせきが強まっていくのが典型的な経過です。初期症状は、普通の風邪のようなのですが、咽頭痛、全身倦怠感、筋肉痛などもあり、その後、頑固なせきが続きます。
せきは、最初は空咳ですが、だんだん痰が絡んできます。感染した人すべてが発症するわけではなく、約3~10%に発症します。
家族内にマイコプラズマ感染症の人がいる、幼稚園・学校・職場で流行している、などの場合は要注意です。また長期間咳が続くときや、普通の風邪薬では症状が改善しない場合は、すぐ受診しましょう。
診断や治療はどうなっているの?
血液検査で抗マイコプラズマ抗体の上昇があることが確定診断です。また飛沫感染なので家庭、学校、職場などの流行も診断の助けになります。胸部レントゲン写真では、肺炎として捕えにくいものです。
マイコプラズマは、細菌の一種ですが、一般の細菌とは異なっていて、細胞壁をもっていません。そのためペニシリン系などの薬は効果がなく、有効な薬(テトラサイクリン系など)に限られています。
また、急性呼吸不全を起こした場合は、抗菌薬とともにステロイド薬の併用が有効であるとされています。
・合併症
以前喘息発作を起こしたことがある場合は、悪化することがあるので注意が必要です。
高熱のため熱性けいれんや発疹が出ることもあります。マイコプラズマは心筋炎、心外膜炎、中耳炎、多形紅斑、それ以外にも髄膜炎、脳炎、多発神経炎、など多彩な病気を引き起こす可能性があります。
・経過
一般的には、予後は良好です。しかし、咳が長引くことが多く、1か月以上続くこともあります。また一度かかっても再発することがあります。
発熱が続き、嘔吐、頭痛などが見られる場合は、合併症を疑った方がいいかもしれません。
髄膜炎、中耳炎、尿道炎、肝炎などの可能性もあります。成人より小児のほうが合併症の頻度が多いです。
・予防
患者の鼻やのどからの分泌物に触れたり、飛沫を吸い込んだりすることにより感染します。ですから手洗いやうがいが大切です。人混みを避けてマスクを着用しましょう。
また患者との接触を避けることも重要です。発病前1週間~発病後10日間程度が感染力のある期間といわれていますので、マイコプラズマ肺炎の患者と同じ部屋に寝るのは、控えたほうがいいでしょう。
登校登園の時期は、急性期が過ぎて症状が改善して、全身状態がよくなってからがいいようです。
<執筆者プロフィール>
南部 洋子(なんぶ・ようこ)
助産師、看護師、タッチケア公認講師 株式会社 とらうべ 社長。国立大学病院産婦人科での経験後、とらうべ社を設立。タッチケアシニアトレーナー
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