「和食はヘルシー」は本当?管理栄養士が解説

Mocosuku(もこすく)
  • 「和食はヘルシー」は本当?管理栄養士が解説

  • Mocosuku(もこすく)
医療資格者や専門家だけの記事を配信

「和食はヘルシー」は本当?管理栄養士が解説

公開日時

和食がヘルシーな4つの理由

 

和食のどのような点がヘルシーなのでしょうか。次の4つの「理由」が挙げられます。
 
その1:脂質が少なく、過剰なエネルギーを控える
 
欧米型の食事は伝統的に肉類を中心とした食事で、脂質も多く、エネルギー(カロリー)も高いです。
 
比べて和食は、米などを中心とする穀類、野菜類、魚介類といったエネルギーが低い食材を好んで使用している点が、肥満や糖尿病など、過剰なエネルギー摂取による病気を生んでいる飽食の現代ではヘルシーです。
 
しかも、生食、煮る、ゆでる、焼く、和えるなど多様な調理法が充実しています。
 
このような調理法を上手く活用することで、油の使用量を抑えて、結果的にエネルギーを少なくすることができます。
 
 

その2:一汁三菜という基本スタイル
 
和食には「一汁三菜(いちじゅうさんさい)」という基本スタイルがあります。
 
「一汁三菜」とは、主食のごはんに加えて、汁物が一品と、主菜一品と副菜二品をそろえた献立の構成のことです。具体的には、汁物は味噌汁やすまし汁など、主菜は魚・肉・卵・大豆製品を用いた料理、副菜は野菜・海藻類・きのこ・いも類などを使用した料理のことです。
 

ちなみに古来、三菜は「なます・煮物・焼き物」を指していました。このような現代版一汁三菜をそろえることで、栄養学的には、三大栄養素と呼ばれる炭水化物・タンパク質・脂質を理想的なバランスでとることができます。
 
これが、ヘルシーといわれる理由の一つです。
 

また、副菜は単なる「脇役」ではありません。和食の副菜は充実していて、多くの食材をとることができ、食物繊維、ビタミン、ミネラルなどをしっかりと補える利点をもっています。

 
 

その3:素材を活かしたうま味の利用
 
和食の味を特徴づける技術のひとつに「うま味」の活用があります。
 
おもに昆布や鰹節、煮干しなどを使用した「だし」には、必ずうま味成分が入っています。このように、だしを料理に使用することで、素材の味を活かしておいしくいただくことができますし、何より調味料の量を減らすことができます。
 
過剰な調味料の摂取を抑えることは、塩分や糖分の量を減らし、高血圧やその他の生活習慣病の予防につながるので、ヘルシーに料理を仕立てることができます。
 
 
その4:腸内環境を改善する発酵食品
 
発酵食品には、殺菌作用や、腸内の悪玉菌と善玉菌のバランスを整え、腸内環境を改善する作用があります。
 
世界の料理にも、チーズ、ヨーグルト、キムチ、ザーサイなど必ず有名な発酵食品がありますが、和食の場合は醤油や味噌などの調味料や納豆などが、代表的な発酵食品といえます。

 
 

和食も完ぺきにヘルシーではない!

 
このように世界も認めたヘルシーな和食ですが、実は弱点があります。
 
今、その改善を叫ばれているのが「塩分」の問題です。和食といえば、これまた必ず登場する「塩、醤油、味噌」などの調味料が、塩分の摂りすぎに一役買っているのです。
 
ちなみに、世界保健機構(WHO)の食塩摂取目標は1日5グラムですが、2015年に厚生労働省が発表した「国民健康・栄養調査」では、2014年現在で、成人一日あたりの塩分平均摂取量は、男性10.9グラム、女性9.2グラムでした。とくに年配になるほど塩分摂取量が増え、いわゆる「濃い」味つけが好まれています。
 
こうした傾向は、今後、和食や日本人の食生活が変わっていく必要があるところでもあります。

 
 

近頃コンビニやスーパーでは醤油や味噌などに「減塩」とうたわれる商品を見かける機会が多くなりました。
これらが広く世の中に定着し、塩分の摂りすぎがクリアされたと時、和食はいよいよ完ぺきにヘルシーなものだ、と言えるようになるかもしれません。

 
 
<執筆者プロフィール>
桜 イクミ(さくら・いくみ)
管理栄養士・健康運動指導士・フードスペシャリスト
株式会社 とらうべ 社員。病院での栄養管理・栄養指導の経験を経て、現在は企業で働く人の食と健康指導を行っている。
 

スポンサーリンク

先週よく読まれた記事

ヨガはどうしてカラダに良いの? 医学的に掘り下げてみよう

執筆:吉村 佑奈(保健師・看護師) 医療監修:株式会社とらうべ 昨今のヨガブームにより、趣味としてヨガを楽しまれている方も多いのではないでしょうか。 「なんとなく健康に良さそう」というイメージの強いヨ...

不眠症ならぬ「過眠症」をご存じですか? 症状や原因とは

執筆:吉村 佑奈(保健師・看護師) 医療監修:株式会社とらうべ あなたは自分の睡眠に満足していますか? 睡眠の悩みと聞くと、多くの方が思い浮かべるのは「不眠症」でしょう。 しかし、「過眠症」で悩んでい...

朝起きたら首が… やっかいな「寝違え」の原因と治し方

執筆:南部 洋子(助産師・看護師・タッチケア公認講師) 医療監修:株式会社とらうべ 「朝起きたら首が痛い・・・寝違えたかも!?」 このような経験、どなたも一度はあるでしょう。 そもそも寝違えはどうして...

冷え対策に、「温活」をはじめよう!

執筆:吉村 佑奈(保健師・看護師) 医療監修:株式会社とらうべ 婚活、妊活、終活など、最近は「〇活」というコトバがよく使われています。 「温活」もそのうちのひとつで、今や書籍やインターネットなどあちこ...

「失神」と「睡眠」の違い どこに注目すればいい?

執筆:南部 洋子(看護師) 監修:坂本 忍(医師、公認スポーツドクター、日本オリンピック委員会強化スタッフ) 「失神」と「睡眠」の違い、見た目ではなにがどう違うのか、わかりませんよね。 例えば、飲み会...

つった! 寝ていたら足がつるのはどうして?対処法は?

執筆:山村 真子(看護師・西東京糖尿病療養指導士) 夜寝ている時、突然足がつってしまい、激痛で目が覚めた! そんな経験をされた方、いらっしゃいませんか? 突然起こる足のつり。どうしてこのようなことが起...

働く人に増えている「適応障害」 原因となる3つのパターン

執筆:山本 恵一(メンタルヘルスライター) 医療監修:株式会社とらうべ 環境にうまくなじめないことから、落ち込んだり、意欲や自信を喪失したり、イライラして怒りっぽくなったり、体調面が悪くなったり、場合...

【食事】新着記事

妊婦さんはとくに気をつけたい、チーズなどにいる細菌「リステリア」

妊婦さんはとくに気をつけたい、チーズなどにいる細菌「リステリア」

執筆:南部 洋子(助産師・看護師・タッチケア公認講師) 医療監修:株式会社とらうべ 妊娠中はお腹の赤ちゃんのためにしっかりと栄養を摂りたいもの。 しかし、なかには妊婦さんが控えたほうが良い食品もあり...

2019/08/02 18:30掲載

大ブレイクの「タピオカ」 健康・美容的に見た評価は?

大ブレイクの「タピオカ」 健康・美容的に見た評価は?

執筆:山本 ともよ(管理栄養士・サプリメントアドバイザー・食生活アドバイザー) 医療監修:株式会社とらうべ 独特な食感と豊富なバリエーション、インスタ映えする見た目などから、若い女性を中心に大ブレイクして...

2019/07/30 18:30掲載

『苦くてまずい』はもう古い?実は栄養満点の気になる野菜『ケール』とは

『苦くてまずい』はもう古い?実は栄養満点の気になる野菜『ケール』とは

執筆:磯野 梨江(管理栄養士) 医療監修:株式会社とらうべ ケールと聞いて青汁を連想される方も多いのではないでしょうか? なんとなく苦くて不味いイメージが強いですが、ケールには現代人に不足しがちな栄...

2019/07/23 18:30掲載

フルーツはいつ食べる? 『朝は金、昼は銀、夜は銅』ってどういうこと?

フルーツはいつ食べる? 『朝は金、昼は銀、夜は銅』ってどういうこと?

執筆:山本 ともよ(管理栄養士・サプリメントアドバイザー・食生活アドバイザー) 医療監修:株式会社とらうべ フルーツは健康や美容によい栄養素を摂取できる食品として、私たちの食生活に浸透しています。 ...

2019/07/12 18:30掲載

乳児用「液体ミルク」解禁! メリット・デメリットや注意点

乳児用「液体ミルク」解禁! メリット・デメリットや注意点

執筆:座波 朝香(助産師・保健師・看護師) 医療監修:株式会社とらうべ 2019年春、乳児用「液体ミルク」の国内での販売が解禁されました。 このことを受け、従来の粉ミルクとの違いや、メリット・デメリ...

2019/07/09 18:30掲載

乳酸菌の「動物性」と「植物性」は何が違う? 選ぶなら??

乳酸菌の「動物性」と「植物性」は何が違う? 選ぶなら??

執筆:山本 ともよ(管理栄養士・サプリメントアドバイザー・食生活アドバイザー) 医療監修:株式会社とらうべ 「乳酸菌」に期待される健康効果から、数多くの関連食品が出回り市場規模は年々拡大しています。 ...

2019/07/05 18:30掲載