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執筆:座波 朝香(助産師、看護師)
「母乳で育てたい」と思っている女性は実に9割。
それだけ母乳のメリットが大きいということは想像がつきますが、母乳とミルク、実際にはどのような違いがあるのでしょう?
赤ちゃんの栄養や健康、家計的な負担など、それぞれのメリット・デメリットを紹介します。
栄養面でどれだけ違うの?
まず前提として、私たちは哺乳類なので、同じ動物(人間)のお乳を飲んで育つことは当然のことです。
ところが、乳児用のミルクは人間のお乳からではなく、牛のお乳から作られています。そのため、母乳とミルクは残念ながら同じものにはなり得ません。
栄養面などで「だいたい同じ」だといえる点と「大きく違う」点について説明します。
だいたい同じ点
母乳には赤ちゃんの成長に必要な栄養がすべて含まれているとされています。
一方の育児用ミルクでは、基本的な成長に必須とされる栄養素について基準が定められて販売されています。
たとえば脂肪・水分・炭水化物・たんぱく質・ビタミン・ミネラル・DHA・AA(アラキドン酸:長鎖脂肪酸)は母乳もミルクも同じように含まれています。
ただし、ミルクの場合には脂肪の量が赤ちゃんに負担のないように調整されていたり、ビタミンやミネラル類、DHAなどが添加していたりと、人工的に調整されています。
そのため、身体にとりいれたときの働き方が全く同じとはいい切れない部分もあるようです。
また、ミルクを作るときに使う水は、清潔で安全なものを調達する必要があります。
日本はどこにいても水質が人間の身体に影響がないよう、厳しい基準の下で供給されています。ただ、ミルク自体には「サカザキ菌」という菌が存在しています。
それを殺菌するためには一定以上の温度のお湯でミルクを作るなど、適切な作り方をきちんと把握している必要があります。
大きく違う点
母乳は生なので、含まれている細胞や成分、機能も生きている点がミルクとの大きく異なります。
たとえば免疫。
母乳には、身体の中にウィルスなどが入ってきたときに闘うための仕組みのひとつである抗体が存在しています。母乳育児中のお母さんが風邪をひくと、風邪のウィルスと闘うための特別な抗体がつくられますが、これが母乳の中にも出ていきます。
そのため、母乳を飲んだ赤ちゃんはウィルスに攻撃される前に必然的に守られていることになります。
そのほかにも「早産で赤ちゃんを産んだお母さんの身体から作られる母乳」は、通常の母乳よりも、鉄分やたんぱく質、免疫物質が多いことがわかっています。
また、赤ちゃんは長い時間をかけて乳房に吸い付いていることがあります。
時間をかけることで出てくる乳汁(後乳)ほど、脂肪の量が多いこともわかっています。これらは、すべて母乳にあってミルクにはないメリットです。母乳が生きた成分であるからこその違いなのです。
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