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あがり症の“原因”を克服する
社交不安障害の場合、身体症状については抗うつ剤でもある「SSRI」などによる薬物療法が、また完全主義や悲観的傾向といった認知のしかたや行動特徴に関しては認知行動療法が、それぞれ有効とされています。
そして社交不安障害の前身ともいえる「対人恐怖症」の治療では「森田療法」が注目され、症状の消失だけでなく原因の治療も盛んに試みられています。
簡単にいうと「とらわれ」が原因であり、そこから解放されることであがり症(神経症)的傾向とのつきあい方が変わるというものです。
たとえば、人前で顔が赤くなることが「嫌だイヤだ」と思っていれば、「とらわれ」ですが、仮に「そうなってもいいや!」と認めることができれば、赤面は気にならなくなります。
さらにそんな状態に慣れると、赤面しなくなることも生じるわけです。
いいかえれば、短所や弱い自分を「認めない・恥だ」と感じてしまうのを、「それが自分の現実だ(あるがまま)」と受け入れていくプロセスが、「とらわれ」からの解放です。
くりかえし練習しよう!
カラオケは人前で歌うことを日常化した文化といえるかもしれません。
それに呼応してか、ひところに比べると「赤面恐怖症」は減っていると言われています。小さいころから人前で歌っていると、少々ミスをしても恥ずかしいと自意識過剰にならずに済むのでしょうか。
同じように、スピーチでも発表でも苦手だからとやらないより、チャレンジすることであがり症を克服できることが指摘されています。
もちろん、それを部下や生徒など相手に強要してはいけないでしょうが、自分からチャレンジして、あえて失敗の経験を増やすうちに「気がついてみると平気になっていた」ということも“あり”なのです。
<参考>
樋口他編集『今日の精神疾患の治療方針』医学書院
<執筆者プロフィール>
山本 恵一(やまもと・よしかず)
メンタルヘルスライター。立教大学大学院卒、元東京国際大学心理学教授。保健・衛生コンサルタントや妊娠・育児コンサルタント、企業・医療機関向けヘルスケアサービスなどを提供する株式会社とらうべ副社長
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