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社会保守のための「男らしさ」
それぞれの時代や、コミュニティを守っていくためにジェンダーが奨励されるという側面があります。
そしてかつての封建社会では、個人の幸福よりも、世間やムラを守ることの方が尊重されて、「男らしく」あることに各人が染まっていった時代がありました。
しかし現代では、そのように考えるよりは自分や個人の幸福を優先して、ジェンダーイメージに自分を合わせることに以前よりも男性が意欲的ではなくなっていると言えるのではないでしょうか。
こうした動向は、男性がかつてのようには男らしくなくなっているのであって、即、女性化しているかどうかは、よく考えてみる必要があるでしょう。
セクシャリティの多様性:典型的な「男」と「女」だけではなくなってきた?
ジェンダーとしての「性差」は社会的・文化的なので、時代や地域によってその内容を変えるという相対的な性質がありますが、生物学的なセクシャリティはそれほど流動的ではありません。人間を含む哺乳類は、妊娠6週目くらいの胎児期に男女の性の分化が始まります。それまでは性的には未分化な状態だそうです。
性別にかかわる性染色体の組み合わせがXYの胎児の場合、Y染色体上の性決定遺伝子から「精巣」を造るよう指令が出て、男性ホルモンを分泌し、オスの身体や脳になっていきます。
一方、XX染色体だとY染色体がないので、男性ホルモンは分泌されず、メスになっていきます。ですから、性分化のプログラムの初期状態は「メス型」ということになりますね。
このように、セクシャリティは産まれる前から男性か女性かを決定しています。
とはいえ、性分化を決定する男性ホルモンへの感受性が標準レベル以下だと、「遺伝的男児は育っていく過程でさまざまな心の性を、時間をかけて発達させていく」という専門家の指摘もあります。
そんな中には、男であるにもかかわらず女性の心をもっている人も出てくることが想定されているようです。
つまり、男の身体でありながら女性の心をもったり、あるいは男でも女でもない心をもったりと、典型的な男と女の、いわば「中間型」が現れ得るという考えです。
【参考】
麻生一枝『科学でわかる男と女になるしくみ』サイエンス・アイ新書 2011
<執筆者プロフィール>
山本 恵一(やまもと・よしかず)
メンタルヘルスライター。立教大学大学院卒、元東京国際大学心理学教授。保健・衛生コンサルタントや妊娠・育児コンサルタント、企業・医療機関向けヘルスケアサービスなどを提供する株式会社とらうべ副社長
<監修者プロフィール>
株式会社 とらうべ
医師・助産師・保健師・看護師・管理栄養士・心理学者・精神保健福祉士など専門家により、医療・健康に関連する情報について、信頼性の確認・検証サービスを提供
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