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執筆:山本 恵一(メンタルヘルスライター)
医療監修:株式会社とらうべ
「気合いだ!気合いだ!気合いだ!」ではありませんが、スポーツなどではよく「最後は、気力勝負!」と鼓舞されます。
昔から「火事場のバカチカラ」といわれるのも同じメッセージかと思われますね。
しかし、これって一体どういうことなのでしょうか?詳しく見ていきましょう。
「気力」と「体力」の定義は?
『goo辞書』によると、気力とは「何かを行なおうとする精神力。気持ちの張り」とされています。
「困難や障害に負けずにものごとをやり通す強い精神力。気合い。」(weblio辞書)と場面を困難や障害など限界状況に限定した意味も示されています。
類語に「根性」「精神力」「ガッツ」「元気」などが挙げられています。
一方の体力の定義とはどうでしょう。
「体力とは生命活動の基礎となる身体を動かす力のことである」と、体力の定義は気力のそれよりもはるかに明晰です。
具体的に「筋力・心肺能力・運動能力などの総合的な身体能力のことを指し、身体を動かすスポーツ等で肉体能力に恵まれ、成果を出すことができる者は、体力があると評価される」とも述べられています。学術的な研究団体の日本体力医学会(一般社団法人)もあるくらいです。
気力と体力の対比は意味がある?
このように、かたや「気力」はかなりあいまいで象徴的な概念です。比べて「体力」は科学的な概念です。
ですから、両者を比べてどちらが勝っているのかという問い自体が、適切でないのではないでしょうか。
UFOと米軍が戦争したらどちらが勝つかというのは、せいぜいSF的楽しみであって、事実問題にはなりえないのとお同じだと思います。
では「気力が体力に勝る」とはどういうことなの?
それでも「気力は体力に勝る!」とよくいわれるのは、何を言わんとしているのでしょうか?
よく引き合いに出されるのは、スポーツなど勝負の場面です。
非常に体力的に優れた選手が互いに競い合って勝ち負けを決する時、それまで双方とも体力を極限まで鍛えて勝負にのぞんでいますから、勝敗は微妙な体力差によって決するよりも、戦術や環境、さらには、勝負への意気込みや勝利への執念といった「気力」にまさった方が、勝利への確率を高めてくれることを、彼らは経験的に知っているのでしょう。
その意味では、体力ではなく気力が勝因を決すると言っているのではなく、体力を尽くすだけでは決定的な勝因にならない時、気力が勝負を分けると言っていると解釈することができます。
もう一つの解釈は、それまで鍛えてきた大量のパフォーマンスを最大化するには、精神力(気力)がかかわることが重要だということです。
たとえば、「火事場のバカチカラ」は、気力がバカチカラを出すのではなく、気力によって体力が最大限に発揮されるという意味にほかなりません。ですから、火事場には実際には、バカチカラを発しても動かせない物もたくさんあります。
つまり、気力と体力は「あちらかこちらか」という二律背反ではなく、体力を効果的に機能させる要因が「気力」であって、とくに限界状況では気力によって効果的に体力が発揮されるということを言っているのではないでしょうか。
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