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何も卒業していない主人公
さて実写版「ど根性ガエル」では30歳になったヒロシの精神年齢はほぼ当時のまま。つまり何からも卒業していないのです。
30歳という設定から考えると、ドラマのヒロシの生き方そのものが常識的には「あり得ない」です。
オリジナルのヒロシが多くの小中学生には等身大に感じられる主人公だったわけですが、今度のヒロシはちょっと違うのです。
しかし、私たちが自分を重ねられるところもあります。
なぜなら私たちは必ずしも好き好んで子ども時代から卒業したわけではありません。もちろん、大人になることを受け入れて、周りに求められている今の自分を全力で生きています。
ですが、もう少し夢と希望を持ち続けたかった、若い時にやり残したことがある…など子ども時代への未練が多少なりとも残っているのではないでしょうか。
子ども時代を引きずったまま30歳まで来てしまった実写版「ど根性ガエル」の「あり得ないヒロシ」は、私たちが生きてこなかった自分なのです。
人生とメンタルケア: やり残したストーリー、自分の糧に
ユング心理学では生きてこなかった人生を「シャドウ(影)」と言います。
松山ケンイチさん演じるヒロシはあなたのシャドウかもしれない…そんな視点でこのドラマを見ると、あなたが生きてこなかったあなたの人生と向き合うことが出来るでしょう。
特にマンガ・アニメ版「ど根性ガエル」をリアルタイムで見ていた世代は、今よりも狭い価値観で画一化された人生を生きることを求められていました。
人生の在り方が多様化した現代社会から振り返ると「本当はこう生きたかった…」というやり残し感もあるのではないでしょうか。
人は一人一人が、自分だけのストーリーを自分らしく生きることが重要です。
実写版「ど根性ガエル」は、あなたのやり残したストーリーと向き合って、今の自分がここにいる意味を再発見させてくれる、そんなドラマになるかもしれませんね。
<執筆者プロフィール>
杉山崇
神奈川大学人間科学部/大学院人間科学研究科 教授
心理相談センター所長・教育支援センター副所長
臨床心理士・一級キャリアコンサルティング技能士
公益社団法人日本心理学会代議員
主な著書
好評発売中『入門!産業社会心理学』(北樹出版)
2015年9月『読むだけで、人づきあいがうまくなる』(サンマーク出版)発売予定。
公式サイトはこちら⇒ http://www.sugys-lab.com/
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