(※記事中の語句のリンクは、その語句について詳しく解説したMocosuku姉妹サイトが開きます)
便秘薬「酸化マグネシウム」の死亡リスク :重い副作用「高マグネシウム血症」
国内における酸化マグネシウム製剤使用の歴史は古く、昭和25年から便秘薬などとして広く使われてきました。厚生労働省によると年間の使用者数は約4,500万人にのぼるそうです。
今回報告された酸化マグネシウム製剤の副作用は「高マグネシウム血症」です。高マグネシウム血症は呼吸抑制、意識障害、不整脈、心停止に至ることのある重大な副作用です。血清マグネシウム濃度を測定するなど十分な観察を行い、異常があれば直ちに使用を中止する必要があります。高マグネシウム血症の徴候には次のものがあります。
・悪心
・嘔吐
・口の渇き
・徐脈
・皮膚潮紅
・筋力低下
・傾眠
副作用の報告には高齢者が多いという特徴があります。高齢者の便秘の問題と合わせて考える必要があるでしょう。
便秘薬「酸化マグネシウム」の死亡リスク :介護を必要とする人の便秘対策を
高齢になると便秘がちになります。排泄を促すのに必要な腸の蠕動運動(ぜんどううんどう)が働きにくくなり、また、腹圧を高める筋力も低下します。日中の運動量が低下し、食事の量が少なくなることも便秘の要因になります。こうした生理的な変化に加え、環境の変化による精神的な影響もあります。
特に介護を必要とする人で生活環境が大きく変わる場合、精神面での影響が排便に大きく影響します。排便は、排泄しようとする積極的な意志によってコントロールできるものではありません。幼少期から教育を受け、何十年も生活を続けるなかで身に着けた「排泄してはならない」という心理的・身体的抑制が解かれることで排便が促されます。例えば、「排便は自宅の個室トイレでするもの」という脳による抑制が強ければ、異なる環境での排便は困難になります。
便秘を防ぐポイントは次の通りです。
1)水分と食物繊維をたっぷり摂る
2)できるだけ運動する
3)規則正しい生活で食事のリズムを作る
4)心理面、環境面にも配慮し、排便のリズムを作る
酸化マグネシウム製剤の使用による死亡例の中には、統合失調症や認知症を合併する高齢者に対し、漫然と長期投与されていたケースがありました。副作用に細心の注意をはらうとともに、排便にともなう生活習慣の違いや、個々人の尊厳を考慮し、便秘対策を含めた解決が求められています。
<参考>
酸化マグネシウム製剤で死亡例 厚労省、注意喚起を指示
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20151021-00000013-asahi-soci
監修:岡本良平医師(東京医科歯科大学名誉教授)
スポンサーリンク