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過呼吸の状態を意図的に作り出す
過呼吸・過換気症候群を初めて体験した時、「これで人生が終わるのか」というくらいの苦しみと恐怖を感じる人は多いと言います。それゆえに、「またなるのではないか」という、恐れを呼び起こす考えから離れられなくなってしまう人も少なくないようです。
意図的に過呼吸状態を作り出すこともできます。
これは「内感覚暴露」といって、パニック障害などの治療にも組み込まれています。これは、身体的な過呼吸状態を意図的に作り出し、不快感を繰り返し経験することでその感覚に慣れ、それが必ずしも危険ではないということ体感的に学ぼうとするものです。
複数のものさしを使い分ける
過換気症候群のように、「これは安全だ」とわかっているのに「危険だ」と感じてしまうことは、実はそれほど変なことではありません。言い換えると、「これは安全だ」と考えているのは脳の表面(新皮質)のところで、「危険だ」と感じているのは、大脳辺縁系や扁桃核のある旧皮質という、脳の深いところに起因しています。頭の表層と深いところの間で、違うメッセージが発生することで、混乱が加速度的に進み、恐慌状態になると考えられています。
前述した内感覚暴露は、「自分が作り出した状態だから安全である(らしい)が、身体的には不快感がある」という体験になります。そのような体験を繰り返すことで、過換気症候群という身体感覚が必ずしも危険ではない、ということを理解し、脳の表層と深層の間のつながりを作っていく作業というわけです。
身体感覚のものさしと、知識というものさし、感情のものさし。これらが意味するところをうまく理解して、必要に応じて使い分けられる知恵を手に入れたいですね。簡単ではないかもしれませんが、面白い取り組みなのではないかと思います。
<執筆>
●玉井 仁(たまい・ひとし)
東京メンタルヘルス・カウンセリングセンター カウンセリング部長。臨床心理士、精神保健福祉士、上級プロフェッショナル心理カウンセラー。著書に『著書:わかりやすい認知療法』(翻訳)など
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