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成熟としての老い
しかしながら、最近のコマーシャルなどを見ていると、たとえば、三浦雄一郎さんが80歳を超えて世界的高山に登頂したとか、加山勇三さんは70歳を超えてなおも、コンサートのステージを精力的にこなしているとか、黒柳徹子さんは80歳を超えて元気にテレビで司会役をつとめているとか、高齢者になっても決して衰えてはいない、というメッセージを発するお年寄りも増えてきているように感じます。
実際に、進藤貴子(川崎医療福祉大学教授:臨床心理学)さんは「高齢者福祉と高齢者心理学」(2010)という論文で、「近年の長寿研究からは,年をとると人格の成熟性が増大することを示すポジティブなデータが紹介されている。」と述べて、むしろ実証的に、加齢には「衰え」るばかりでなく、「成熟する」という実例が示されていることを指摘しています。
確かに「老」というコトバは、たとえば中国語では「老師」「老酒」のように、「成熟した」という意味合いの、ポジティブな言葉です。「衰退」とはちがった、もうひとつの「老」の意味に、少なくとも日本ではこれまで、あまり光が当たってこなかったのかもしれません。
ですから、「頑固でワガママ」という確固としたイメージも、もしかしたら、それは現実の一部に過ぎないのかもしれません。もしそうなら、「頑固でワガママ」は気をつけないと「偏見」になるかもしれませんね。
【参考】
・公益財団法人長寿科学振興財団『健康長寿ネット』(http://www.tyojyu.or.jp/hp/page000000300/hpg000000227.htm)
・進藤貴子『高齢者福祉と高齢者心理学』(http://kaigolab.com/column/2088)
<執筆者プロフィール>
山本 恵一(やまもと・よしかず)
メンタルヘルスライター。立教大学大学院卒、元東京国際大学心理学教授。保健・衛生コンサルタントや妊娠・育児コンサルタント、企業・医療機関向けヘルスケアサービスなどを提供する株式会社とらうべ副社長
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