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ストレスと甘いものの関係
ここまでお話したように、過度なストレスは身体にさまざまな影響を及ぼします。そして、これによって現れる反応のひとつに食欲の変化が挙げられます。
食欲は、うつ状態や緊張、恐怖、不安といった精神的なストレスを感じているときには減退することが多いといわれています。
逆に同じ精神的なストレスでも、我慢やイライラなどの場合には、食欲が増えるといわれています。そして、これに関係しているのが、自律神経系の働きです。
自律神経系は、活動時に優位に働く交感神経とリラックス時に働く副交感神経の2つで成り立っています。
この2つの神経は、バランスをとりながら身体の機能を調整していて、一方が活発に動いているときには、もう一方の活動は抑制されます。
過度にストレスを感じている状態のときに活発に働くのは交感神経です。
これに対して、脳は副交感神経を働かせようとしますが、その中で最も簡単にできる方法が「食べること」です。とくに、糖質はエネルギーに変わるスピードが速いため、精神的な疲労を和らげることに効果を発揮しています。
そして、甘いものには糖質が多く含まれています。ですから、ストレスを感じた時に甘いものを食べたくなるのです。
また食欲のコントロールには、脳内の「報酬系」といわれる部分も大きく関わっています。
食べ物を摂ると、報酬系が刺激され神経伝達物質である「ドーパミン」が出されます。
このドーパミンは快楽物質ともいわれ、幸福感をもたらす作用があります。
さらに、この快楽は脳に記憶されるため、甘いものを食べてストレスが軽減されたように感じる経験を一度すると、再びストレスがたまったときに、同じように甘いものを食べたくなるようになります。
これが、ストレスがたまったときに甘いものを食べたくなるメカニズムです。
ストレスをうまく発散することが対処法につながる
一時的なストレス解消法として、甘いものを食べるということ自体が悪いというわけではありません。
ただし1回に大量に摂ってしまったり、ストレスがたまる度に口にしていると、当然ですが、糖尿病の発症といった疾病にかかって、健康に悪影響を及ぼします。
ですから、やはりストレスとなっている根本的な原因を解決することが一番でしょう。
とはいえ、すぐに解決できる問題ばかりではありません。むしろ、そのときには解決できないからこそ、ストレスに感じるということもあるでしょう。
ですから、普段からストレスとなりうる要因への対処行動(ストレス・コーピング)を身につけておくことが非常に重要になります。
ストレス・コーピングとは、たとえば「音楽を聴いていると、リラックスできる」「友だちと話していると、気分転換ができる」というように、自分にとってプラスな感情をもたらす行動のこと指します。
そして、これをできるだけ増やしておくことで生活の中でストレスを上手に発散することにつながりますし、ひいては「ストレスがたまったから、甘いものを食べたい」という状態を起こりにくくすることができます。
ただ、中には「自分にとってストレス・コーピングとなるものが見つからない」という方もいるかもしれません。
そういう場合には、自分の生活を改めてふりかえってみるとよいでしょう。意外に意味を感じていなかったあの行動がストレス解消につながっているかもしれません。
ストレスがたまると、ついつい手軽に満足感が得られる甘いものに走ってしまうこともあるでしょう。
しかし毎回甘いものでストレスを発散していると、ひいては甘いものなしではいられない依存症のような状態に陥る危険性もあるので、摂りすぎには注意しましょう。
<執筆者プロフィール>
伊坂 八重(いさか・やえ)
メンタルヘルスライター。
株式会社 とらうべ 社員。精神障害者の相談援助を行うための国家資格・精神保健福祉士取得。社会調査士の資格も保有しており、統計調査に関する記事も執筆
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