他人のことなのに、まるで自分が…「共感性羞恥」

Mocosuku(もこすく)
  • 他人のことなのに、まるで自分が…「共感性羞恥」

  • Mocosuku(もこすく)
医療資格者や専門家だけの記事を配信

他人のことなのに、まるで自分が…「共感性羞恥」

公開日時

 
執筆:伊坂 八重(メンタルヘルスライター)
医療監修:株式会社とらうべ
 
 
「友達が大声で騒いでいたり、知り合いが人前でミスをするのを見て、自分のことのように恥ずかしくなってしまった…」
「TVでドッキリ企画を見ていたら、自分が騙されているような気になって途中で消した…」
 
そんな経験をしたことはありませんか?このような現象を「共感性羞恥」といいます。
 
某テレビ番組で取り上げられ、話題になったこの「共感性羞恥」。
 
どのくらいの割合でこのような現象が起こるかについて、専門的にはっきりとしたことはわかっていませんが、某テレビ番組が独自に行った調査では、共感性羞恥を経験したことがあると答えた人は、およそ1割にのぼるとか。
 
どうしてこのようなことが起こるのでしょうか?詳しく見ていきましょう。
 

 

羞恥心と共感性羞恥

 
他人が恥ずかしいことをしている姿を観察しているときに、自分が「気詰まり」や「ばつが悪い」と感じる経験を「共感性羞恥」といいます。
 
そもそも「羞恥心」とは、「こうあるべきだ」とか「こうしなくては」といった理想と、実際の言動にズレが生じたときに、「自分が他者から拒否されるのでは」という警告信号が出されることによって起こる感情です。
 
たとえば、ズボンのチャックが開いていたとき。本来マナーとしてしまっているべきズボンのチャックが開いていた=周囲の人に見つかったらマナーがないと否定されてしまう」そう思って現れてくる「かっこ悪い」という感情が羞恥心です。
 
このように、羞恥心は自分のやったことが周囲から否定されるという脅威から生まれるものです。
 
一方、共感性羞恥の場合は、自分が行ったわけではないのにこのような羞恥心のような感情が湧いてきてしまいます。

 
 

共感性羞恥のメカニズム

 
共感性羞恥は、人によって個人差はありますが、「羞恥心の強さ」と、「他者への共感性の高さ」という二つの要因によって決まってくると専門家は指摘しています。
 
他者の感情を共有したり、理解したりする「共感性」は、生まれつきヒトに備わっているものといわれています。ただ、他者の感情体験に出くわしたときにどのような反応が自分に起こってくるのかというのは、人によってさまざまです。
 
たとえば、悲しんでいる人を見たとき、相手の状況を不運に思い、「できればそれを軽減してあげたい」と思う人もいるでしょう。これは、他者への同情や関心という他者志向の気持ちとして考えられ、専門的には「共感的関心」と呼ばれるものです。
 
一方、同じように悲しんでいる人を見ても、「自分が同じ状況になったとしたらどうしよう」と考え、苦しいという感情が湧いてくる人もいます。
 
これは、他者の苦痛に対して、動揺など自己志向の感情反応が起こっている状態と考えられ、専門的には「個人的苦痛」と呼ばれています。共感的関心も個人的苦痛もどちらも共感性の側面ですが、共感性羞恥は後者の個人的苦痛の経験のひとつと考えられています。
 
つまり、他者の「ツライ」「悲しい」といった感情に直面したときに、その感情を自分ごととして捉える傾向が強い人は、共感性羞恥も起こりやすいといえます。
 
さらに、もともと羞恥に対する感受性が強いという個人的なパーソナリティが加わることで、「誰かが恥ずかしがる場面を見るだけで自分も恥ずかしくなる」という現象が起きやすくなるのです。

 

スポンサーリンク

先週よく読まれた記事

ヨガはどうしてカラダに良いの? 医学的に掘り下げてみよう

執筆:吉村 佑奈(保健師・看護師) 医療監修:株式会社とらうべ 昨今のヨガブームにより、趣味としてヨガを楽しまれている方も多いのではないでしょうか。 「なんとなく健康に良さそう」というイメージの強いヨ...

不眠症ならぬ「過眠症」をご存じですか? 症状や原因とは

執筆:吉村 佑奈(保健師・看護師) 医療監修:株式会社とらうべ あなたは自分の睡眠に満足していますか? 睡眠の悩みと聞くと、多くの方が思い浮かべるのは「不眠症」でしょう。 しかし、「過眠症」で悩んでい...

朝起きたら首が… やっかいな「寝違え」の原因と治し方

執筆:南部 洋子(助産師・看護師・タッチケア公認講師) 医療監修:株式会社とらうべ 「朝起きたら首が痛い・・・寝違えたかも!?」 このような経験、どなたも一度はあるでしょう。 そもそも寝違えはどうして...

冷え対策に、「温活」をはじめよう!

執筆:吉村 佑奈(保健師・看護師) 医療監修:株式会社とらうべ 婚活、妊活、終活など、最近は「〇活」というコトバがよく使われています。 「温活」もそのうちのひとつで、今や書籍やインターネットなどあちこ...

「失神」と「睡眠」の違い どこに注目すればいい?

執筆:南部 洋子(看護師) 監修:坂本 忍(医師、公認スポーツドクター、日本オリンピック委員会強化スタッフ) 「失神」と「睡眠」の違い、見た目ではなにがどう違うのか、わかりませんよね。 例えば、飲み会...

つった! 寝ていたら足がつるのはどうして?対処法は?

執筆:山村 真子(看護師・西東京糖尿病療養指導士) 夜寝ている時、突然足がつってしまい、激痛で目が覚めた! そんな経験をされた方、いらっしゃいませんか? 突然起こる足のつり。どうしてこのようなことが起...

働く人に増えている「適応障害」 原因となる3つのパターン

執筆:山本 恵一(メンタルヘルスライター) 医療監修:株式会社とらうべ 環境にうまくなじめないことから、落ち込んだり、意欲や自信を喪失したり、イライラして怒りっぽくなったり、体調面が悪くなったり、場合...

【メンタルヘルス】新着記事

自律神経に良い『トリプトファン』を効果的に摂取してハッピー♪になろう

自律神経に良い『トリプトファン』を効果的に摂取してハッピー♪になろう

執筆:磯野 梨江(管理栄養士) 医療監修:株式会社とらうべ 「トリプトファン」はアミノ酸の一種です。 トリプトファンが不足すると精神的に不安定な状態や不眠などを招き、やがて自律神経や体内リズムの乱れ...

2019/07/16 18:30掲載

春のメンタル不調…対策は早めが鉄則。適度な「ズボラ」も大事!

春のメンタル不調…対策は早めが鉄則。適度な「ズボラ」も大事!

執筆:吉村 佑奈(保健師・看護師) 医療監修:株式会社とらうべ この春、多くの新入生や新社会人の方が新たな生活をスタートされたことと思います。 あるいは、家族の学校や仕事の変化に伴い、生活環境や生活...

2019/05/21 18:30掲載

今どきの「五月病」と最近増えている「六月病」…原因と対策

今どきの「五月病」と最近増えている「六月病」…原因と対策

執筆:藤尾 薫子(保健師・看護師) 医療監修:株式会社とらうべ 例年、この時期になると話題になるココロの不調「五月病」。 今や言葉としてすっかり定着しましたが、最近は五月ではなく六月に同じような状態にな...

2019/05/14 18:30掲載

10人に1人とも言われる「産後うつ」は、予備知識も大事

10人に1人とも言われる「産後うつ」は、予備知識も大事

執筆:座波 朝香(助産師・保健師・看護師) 医療監修:株式会社とらうべ 産後のメンタルヘルス不調、いわゆる「産後うつ」は、今や10人に1人は経験するとも言われています。 出産という大仕事を果たした後...

2019/03/13 18:30掲載

大人の悪夢はストレスが原因? 『悪夢障害』とは

大人の悪夢はストレスが原因? 『悪夢障害』とは

執筆:山本 恵一(メンタルヘルスライター) 医療監修:株式会社とらうべ あなたは悪夢に悩まされていませんか? 繰り返し見る悪夢によって睡眠が妨げられ、日常生活にまで支障を来す状態を「悪夢障害」と呼び、医...

2019/03/08 18:30掲載

芸能人にも多いパニック障害… 近年増加している理由は?

芸能人にも多いパニック障害… 近年増加している理由は?

執筆:伊坂 八重(メンタルヘルスライター) 医療監修:株式会社とらうべ 昨年、アイドルグループ「Sexy Zone」の松島聡さんが突発性パニック障害であることを公表し、芸能活動の休止を発表したことは記憶に...

2019/03/05 18:30掲載