(※記事中の語句のリンクは、その語句について詳しく解説したMocosuku姉妹サイトが開きます)
文化によって異なる距離
E.ホールは同じ研究で、異なる文化ではそれぞれのゾーンの距離が異なってくることを、比較文化的に研究しています。
たとえば、欧米人は日本人よりも距離が狭いと言われます。
また、女性の方が男性よりも距離が狭いとされています。
こうした「違い」が何をもたらすかというと、パーソナルスペースが狭い方は、ある程度近寄ってこないと、たとえば「密接空間」に入ってきてくれていないと感じます。
ですから、パーソナルスペースの広い方(たとえば日本人)は、密接空間の中に相手がいると感じていても、狭い方にとってみると、「まだ入ってきていない」と感じてしまい、そこにディスコミュニケーションが起きるという具合です。
アラブ人は欧米人よりも距離が狭いと考えられていて、密接空間などは顔が触れるほど狭いとされています。
そのため、日本人からすれば十分に近づいて親密の情を表しているのに、相手のアラブ人には、「この日本人は自分を好きではないのか」と思ってしまう例などが、よく引き合いに出されます。文化的摩擦の原因にもなりかねませんね。
空間は等質ではない
幾何学的にいえば等質な空間。
しかし、心理的には空間は等質ではなく意味に満たされ、性別や民族別、あるいは個人別に独特の意味が込められていることを示したのが、ホールの研究の優れたところでした。
自分の距離感、相手の距離感、自分と相手との距離感といったことに着目すると、そこには「見えない」意味が満たされ、コミュニケーションがとれるかどうかのカギが潜んでいるということですね。
【参考】
エドワードT.ホール『かくれた次元』日高敏隆、佐藤信行訳、みすず書房、1970(http://health.goo.ne.jp/mental/yougo/025.html)
<執筆者プロフィール>
山本 恵一(やまもと・よしかず)
メンタルヘルスライター。立教大学大学院卒、元東京国際大学心理学教授。保健・衛生コンサルタントや妊娠・育児コンサルタント、企業・医療機関向けヘルスケアサービスなどを提供する株式会社とらうべ副社長
スポンサーリンク