ちょっとした痛みや違和感を、重大な病気ととらえる「心気症」

Mocosuku(もこすく)
  • ちょっとした痛みや違和感を、重大な病気ととらえる「心気症」

  • Mocosuku(もこすく)
医療資格者や専門家だけの記事を配信

ちょっとした痛みや違和感を、重大な病気ととらえる「心気症」

公開日時

心気症の原因:素質が痛みを強くさせる

 
心気症の原因についてはっきりとしたことはわかっていませんが、ストレスが原因ではないかといわれています。
 
ただし、同じような出来事があってもすべての人が同じようにストレスを感じるわけではありません。心気症の発症には、本人の素質も大きく関係しているのです。
 
ここでいう素質とは、「心配性で些細なことを気にしやすいこと」、「生きることへの執着心が強いこと」を指します。
 
そのため、他の人なら気にしないようなちょっとした心身の異常に対して過剰に反応し、重大な病気に結びつけてしまうのではないかと考えられています。
 
また、このような素質は「精神相互作用」を引き起こすとも考えられています。
 
精神相互作用とは、ある感覚に集中することでその感覚がより鋭くなり、鋭くなった感覚に注目することで、その感覚がますます強くなってしまうことをいいます。
 
つまり、普通であれば気にするほどでもないお腹の違和感であっても、気にしているうちに「お腹の痛み」に集中しすぎてしまい、「痛み」の感じ方がどんどん強くなってしまうということです。
 
 

心気症ではどんな治療があるの?

 
心気症の治療では、抗うつ剤や抗不安薬などの薬物療法や心理療法が用いられます。
 
心理療法では、身体に現れている症状に対する認知を修正する「認知行動療法」や、身体の痛みや違和感を自然なものとして受け入れる「森田療法」、さらに患者の感情に焦点を当ててそれを表現させる「精神分析療法」などが行われます。
 
 
心気症は、心療内科や精神科で診てもらうことができます。
 
心気症の患者さんは、身体の症状ばかりに目が行ってしまうかもしれませんが、とくに心療内科では、ココロとカラダの両方の不調を診てもらうことができます。
 
内科的な検査を行っても原因が分からずに悩んでいる方は、心療内科への受診を選択肢のひとつにしてみてはいかがでしょうか。

 
【参考】
・豊泉 清浩「森田療法におけるヒポコンドリー性基調と精神交互作用」浦和論叢 (33)、155-176、2004年。
・永井 啓太「心気症患者の理解と心理的ケア」http://www.psych.or.jp/meeting/proceedings/77/contents/pdf/1EV-040.pdf
 
 

<執筆者プロフィール>
伊坂 八重(いさか・やえ)
メンタルヘルスライター。
株式会社 とらうべ 社員。精神障害者の相談援助を行うための国家資格・精神保健福祉士取得。社会調査士の資格も保有しており、統計調査に関する記事も執筆

 
<監修者プロフィール>
株式会社 とらうべ
医師・助産師・保健師・看護師・管理栄養士・心理学者・精神保健福祉士など専門家により、医療・健康に関連する情報について、信頼性の確認・検証サービスを提供

 

スポンサーリンク

先週よく読まれた記事

ヨガはどうしてカラダに良いの? 医学的に掘り下げてみよう

執筆:吉村 佑奈(保健師・看護師) 医療監修:株式会社とらうべ 昨今のヨガブームにより、趣味としてヨガを楽しまれている方も多いのではないでしょうか。 「なんとなく健康に良さそう」というイメージの強いヨ...

不眠症ならぬ「過眠症」をご存じですか? 症状や原因とは

執筆:吉村 佑奈(保健師・看護師) 医療監修:株式会社とらうべ あなたは自分の睡眠に満足していますか? 睡眠の悩みと聞くと、多くの方が思い浮かべるのは「不眠症」でしょう。 しかし、「過眠症」で悩んでい...

朝起きたら首が… やっかいな「寝違え」の原因と治し方

執筆:南部 洋子(助産師・看護師・タッチケア公認講師) 医療監修:株式会社とらうべ 「朝起きたら首が痛い・・・寝違えたかも!?」 このような経験、どなたも一度はあるでしょう。 そもそも寝違えはどうして...

冷え対策に、「温活」をはじめよう!

執筆:吉村 佑奈(保健師・看護師) 医療監修:株式会社とらうべ 婚活、妊活、終活など、最近は「〇活」というコトバがよく使われています。 「温活」もそのうちのひとつで、今や書籍やインターネットなどあちこ...

「失神」と「睡眠」の違い どこに注目すればいい?

執筆:南部 洋子(看護師) 監修:坂本 忍(医師、公認スポーツドクター、日本オリンピック委員会強化スタッフ) 「失神」と「睡眠」の違い、見た目ではなにがどう違うのか、わかりませんよね。 例えば、飲み会...

つった! 寝ていたら足がつるのはどうして?対処法は?

執筆:山村 真子(看護師・西東京糖尿病療養指導士) 夜寝ている時、突然足がつってしまい、激痛で目が覚めた! そんな経験をされた方、いらっしゃいませんか? 突然起こる足のつり。どうしてこのようなことが起...

働く人に増えている「適応障害」 原因となる3つのパターン

執筆:山本 恵一(メンタルヘルスライター) 医療監修:株式会社とらうべ 環境にうまくなじめないことから、落ち込んだり、意欲や自信を喪失したり、イライラして怒りっぽくなったり、体調面が悪くなったり、場合...

【メンタルヘルス】新着記事

自律神経に良い『トリプトファン』を効果的に摂取してハッピー♪になろう

自律神経に良い『トリプトファン』を効果的に摂取してハッピー♪になろう

執筆:磯野 梨江(管理栄養士) 医療監修:株式会社とらうべ 「トリプトファン」はアミノ酸の一種です。 トリプトファンが不足すると精神的に不安定な状態や不眠などを招き、やがて自律神経や体内リズムの乱れ...

2019/07/16 18:30掲載

春のメンタル不調…対策は早めが鉄則。適度な「ズボラ」も大事!

春のメンタル不調…対策は早めが鉄則。適度な「ズボラ」も大事!

執筆:吉村 佑奈(保健師・看護師) 医療監修:株式会社とらうべ この春、多くの新入生や新社会人の方が新たな生活をスタートされたことと思います。 あるいは、家族の学校や仕事の変化に伴い、生活環境や生活...

2019/05/21 18:30掲載

今どきの「五月病」と最近増えている「六月病」…原因と対策

今どきの「五月病」と最近増えている「六月病」…原因と対策

執筆:藤尾 薫子(保健師・看護師) 医療監修:株式会社とらうべ 例年、この時期になると話題になるココロの不調「五月病」。 今や言葉としてすっかり定着しましたが、最近は五月ではなく六月に同じような状態にな...

2019/05/14 18:30掲載

10人に1人とも言われる「産後うつ」は、予備知識も大事

10人に1人とも言われる「産後うつ」は、予備知識も大事

執筆:座波 朝香(助産師・保健師・看護師) 医療監修:株式会社とらうべ 産後のメンタルヘルス不調、いわゆる「産後うつ」は、今や10人に1人は経験するとも言われています。 出産という大仕事を果たした後...

2019/03/13 18:30掲載

大人の悪夢はストレスが原因? 『悪夢障害』とは

大人の悪夢はストレスが原因? 『悪夢障害』とは

執筆:山本 恵一(メンタルヘルスライター) 医療監修:株式会社とらうべ あなたは悪夢に悩まされていませんか? 繰り返し見る悪夢によって睡眠が妨げられ、日常生活にまで支障を来す状態を「悪夢障害」と呼び、医...

2019/03/08 18:30掲載

芸能人にも多いパニック障害… 近年増加している理由は?

芸能人にも多いパニック障害… 近年増加している理由は?

執筆:伊坂 八重(メンタルヘルスライター) 医療監修:株式会社とらうべ 昨年、アイドルグループ「Sexy Zone」の松島聡さんが突発性パニック障害であることを公表し、芸能活動の休止を発表したことは記憶に...

2019/03/05 18:30掲載