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瞑想とは心を静めて何かに深く思いをめぐらすことを言います。
古くから成功する人は瞑想の習慣を持っていると言われていました。
たとえば、私たちのITライフをデザインしたと言っても過言ではないApple社の故スティーブ・ジョブズ氏は瞑想を習慣にしていたといいます。
日本でも高度成長期を牽引した家電産業界のカリスマ、松下幸之助氏も瞑想を習慣にしていたと言われています。
この他にも歴史的な偉業を成し遂げた人々の多くは瞑想を習慣にしていました。
このように、成功する人は瞑想をやっている…ということは昔からわかっていました。
しかし、瞑想が成功をもたらしていたのか、成功したから瞑想する時間と気持ちの余裕があるのか謎でした。
しかし、近年の人間科学研究は瞑想そのものに様々な良い影響があることを示しています。
ここでは瞑想がもたらす心理的効果について、心理学者で神奈川大学の教授の杉山崇さんにお話しを聞いてみました。
世界的企業でも「瞑想」が取り入れられている
昨年はIT社会を支える巨大企業、米インテル社が世界の従業員10万人を対象に瞑想トレーニングを展開すると発表して話題になりました。
莫大な予算をかけるのですから、その効果にはかなり確信を持っていると言えそうです。
他にも瞑想を取り入れたリーダー研修から日々の健康法まで、瞑想文化は今や花盛りと言えるでしょう。
では、瞑想にはどのような効果があるのでしょうか?
瞑想は大きく分けると「ヨガ瞑想」と「マインドフルネス瞑想」がありますが、ここでは心理療法としても活用されているマインドフルネス瞑想の効果についてご紹介します。
1:瞑想は「脳の偏り」を改善する
マインドフルネス瞑想とはあなたの望みの全てを保留にして、あなたが感じているあらゆる感覚に心を開くことです。
言い換えれば「無我」の状態で、空気、音、光、重力、そして「雑念」などあなたの身の回りのあらゆるものに身を委ねて「体験」する方法です。
言い換えれば、雑念も含めたあらゆるものとともに漂う瞑想です。
このように瞑想が脳に与える影響から紹介しましょう。
脳は体験に応じて神経のつながりを変化させる可塑性と呼ばれる性質があります。
普段忙しくしていると、「あれをやらなきゃ」、「これをやらなきゃ」といった「忙しさ」に体験が偏ります。
そうすると脳の神経のつながりも「忙しさ」に合わせて偏っていくのです。
瞑想には、脳の偏りを改善する効果があるのです。
2:瞑想は「ストレス」に強くなる
習慣的な瞑想によって特に改善されるのが未来について考えたり、感情のコントロールに関連するおでこの裏側に当たる部分(おでこの上の方は背外側部、下の方は前頭極と呼ばれています)と島皮質と呼ばれる感覚を体験に変換する領域です。
この働きによって、世界をよりビビットに感じられるとともに、穏やかな気持で前向きに物事に取り組めるようになるのです。
さらに瞑想によるストレス低減が高かった人たちには不安生成の中核である扁桃体の体積が減少することも報告されています。
私たちの身の回りには大小さまざまな不安が飛び交っていますが、瞑想の効果が高い人は少々の不安であれば受け流すことが出来るようになると言えます。
こうして、瞑想の習慣を持つ人は日々を喜びと希望に溢れて体験することができるので、幸福感が高まるのです。
3:瞑想は「健康」にいい
不安に過敏でストレスが多いとコルチゾールというホルモンが分泌されますが、このホルモンは一時的な活動性を高めるものです。
私たちにはこの働きは動悸や発汗として体験されますが、この間は免疫機能が抑制されます。
免疫は働かなくなると、単に風邪を引きやすくなるといったことだけでなく、胃腸の障害やガンのリスクを高めることも知られています。
瞑想の習慣がある人は、相対的に健康で長生きできるともいうことが出来ると言えるでしょう。
4:瞑想は「いい人間関係」をつくる
マインドフルネス瞑想はさらに脳のデフォルトモードネットワークと呼ばれる領域の働きを改善することも知られています。
デフォルトモードネットワークとは何もしていないときに働くネットワークです。
自分に対する周囲の反応など私たちが社会で生きる上で大切な情報処理をする領域です。
この領域は忙しさに囚われていると働きにくいことが知られています。
自分の課題や目的に一生懸命にあるあまり誰かの気分を害して、人間関係が取り返しの付かないことになってしまった…、という経験はないでしょうか。
瞑想によってデフォルトモードネットワークが正しく機能するようになると、周囲のこともよく見えるようになってきます。
こうして、よい人間関係を維持することもできるのです。
心は自分の身の安全にもっとも強く反応します。
特に社会的な身の安全には敏感です。
瞑想の習慣でストレスに強くなるのはもちろんですが、社会的な安全をより確実にすることでストレスそのものが少なくなっていくのです。
今回はマインドフルネス瞑想の効果を中心に紹介しましたが、このように瞑想は脳の偏りをなくすことで、「ストレスに強くなる」「健康になる」「ストレスそのものを減らす」という効果があります。
ぜひ、実践してみてください。
一つだけ留意して欲しいのは「雑念」に身を任せる過程で、逆に雑念にとらわれて一時的にとても苦しくなることがある点です。
苦しさを乗り越えれば逆に楽になるのですが、一人では乗り越えるのが難しい場合もあります。
そのような時はマインドフルネス瞑想が習慣になるまで臨床心理士のような専門家に付き合ってもらうのも一つの方法です。
<執筆者プロフィール>
杉山 崇
神奈川大学人間科学部/大学院人間科学研究科教授。心理相談センター所長、教育支援センター副所長。臨床心理士、一級キャリアコンサルティング技能士、公益社団法人日本心理学会代議員。
公式サイトはこちら⇒ http://www.sugys-lab.com/
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