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執筆:山本 恵一(メンタルヘルスライター)
通勤電車やエレベーターなどで、見知らぬ人が寄ってきて、やたら近づいてきたので不快に感じた、というような経験はありませんか。
これは「パーソナルスペース」といって、人間にとって自分を中心とした円周状に広がる距離空間の影響によるものです。
今回はこのパーソナルスペースについて、詳しくご紹介していきましょう。
パーソナルスペースとは
「対人距離」とも訳されるパーソナルスペース。日本では1970年に出版された、アメリカ人文化人類学者E.ホールの『かくれた次元』(みすず書房)で有名になりました。
自分を中軸に円周状に広がっていくパーソナルスペースを、ホールは4つのゾーンに分けました。
・密接距離:ごく親しい人に許される空間
・個体距離:相手の表情が読み取れる空間
・社会距離:相手に手は届きづらいが、容易に会話ができる空間
・公共距離:複数の相手が見渡せる空間
さらに、それぞれのゾーンには、「プロクセミックス」と呼ばれる近接相と遠方相があり、次のような意味空間を構成しています。
密接空間
近接相:抱きしめられる距離
遠方相:手で相手に触れるくらいの距離
個体距離
近接相:相手を捕まえられる距離
遠方相:両手を伸ばせば指先が触れ合う距離
社会距離
近接相:知らない人同士が会話をしたり、商談をする場合に用いられる距離
遠方相:公式な商談で用いられる距離
公共距離
近接相:2者の関係が個人的なものでなく、講演者と聴衆といった場合の距離
遠方相:一般人が社会的要職にある人物と面会するような場合に置かれる距離
心理的縄張りとしてのパーソナルスペース
自分と相手の距離が近ければ近いほど、相手が赤の他人だと、自分の縄張りを犯されたように感じて不快感を覚えるのは、パーソナルスペースがあるからだということになります。
反対に、密接空間に恋人や家族など、ごく親しい人が入ってこなければ、孤独感を強く感じることになるでしょう。
また満員のエレベーターや通勤電車など、パーソナルスペースに他人が入ってこないことを確保できない空間では、エレベーターだと表示階をじっと見つめていたり、満員電車だとつり革広告や、最近では液晶ディスプレイ(トレインチャンネルなど)を見つめていたりするでしょう。
これもまた、パーソナルスペースに他人が侵入してきているからにほかなりません。
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