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冬季うつ病のメカニズム
冬季うつ病の発症に大きく関係しているのが、日照時間です。
私たちの脳は朝、光を浴びることによって覚醒状態に導かれています。そして、このとき脳内で分泌される神経伝達物質が「セロトニン」です。
セロトニンは、「ドーパミン(興奮状態に分泌される)」や「ノルアドレナリン(ストレスを感知して分泌される)」といった脳内神経伝達物質が過剰に分泌されるのをおさえ、ココロのバランスを整える機能を持っています。
そのため充分に光を浴びることができずにセロトニンの分泌量が減ってしまうと、ココロのバランスも乱れ、抑うつ気分などの精神症状が現れることがあります。
また、セロトニンは、睡眠時に働く「メラトニン」という物質の材料にもなっています。そのためセロトニンの分泌が減ることは、覚醒と睡眠の切り替えにも影響を及ぼし、過眠を引き起こします。
このように、太陽の光は私たちの身体に大きな影響を与えています。
秋から冬にかけて日照時間が短くなることで、セロトニンの分泌が抑制され、さまざまな症状が現れることがあります。これが、冬季うつ病です。
実際に、高緯度や日照時間の少ない地域では冬季うつ病の発症が多いといわれています。
冬季うつ病の治療
一般的なうつ病と同様、冬季うつ病の治療でも、抗うつ剤や認知行動療法による治療が行われます。さらに冬季うつ病の場合、高照度光療法も有効であるという報告が多くあります。
高照度光療法では、2500ルクス以上の強い光を2時間以上にわたって照射し、セロトニンの分泌を促していきます。
こうすることで体内時計の乱れを治し、精神症状を改善することが期待できます。
冬季うつ病を発症しないために
ここまでお話してきたように、冬季うつ病の発症と日照時間には大きく関係しています。
言い換えれば、意識して太陽の光を浴びることでリスクを減らすことができるということです。
そこでおすすめしたいのが、起床後30分以内の日光浴。
これによって、セロトニンを分泌する神経(セロトニン神経)が活性化されるといわれています。まずは、朝目覚めたら、カーテンを開け、太陽の光を浴びることを心がけてみましょう。
また日ごろの運動習慣や食生活を見直すことも大切です。
たとえば、ウォーキングやジョギングなどのリズム運動にもセロトニン神経を活性化させる効果があります。また、セロトニンは必須アミノ酸である「トリプトファン」から作られているため、肉類、納豆、アーモンド、乳製品などを意識して摂るとよいでしょう。
このように、生活習慣の見直しによって、冬季うつ病のリスクは減少させることができます。毎年さしたる理由がないのに「冬になるとなんとなく気分が落ち込む」という人は、これを機に生活習慣を見直してみてはいかがでしょうか。
<執筆者プロフィール>
伊坂 八重(いさか・やえ)
メンタルヘルスライター。
株式会社 とらうべ 社員。精神障害者の相談援助を行うための国家資格・精神保健福祉士取得。社会調査士の資格も保有しており、統計調査に関する記事も執筆
<監修者プロフィール>
株式会社 とらうべ
医師・助産師・保健師・看護師・管理栄養士・心理学者・精神保健福祉士など専門家により、医療・健康に関連する情報について、信頼性の確認・検証サービスを提供
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