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性格というより病気だということ
社交不安障害は一般に、10代から20代半ばまでに発症し、男性よりも女性にやや多いとみられています。
うつ病やアルコール依存症などとの合併率も高く、また、治療しないまま症状が経過していることも多いといわれ、数十年にもわたって症状が続き、日常生活や学業や仕事に支障をきたしている人も少なくないといわれています。
これには、社交不安障害を「内気」「人づき合いの苦手さ」といった性格や気持ちの問題だとみなし、これを病気だという風にはなかなか考えない風潮があることも一つの要因かと思われます。
本人も周囲の家族や知人も、こうした傾向を病気だとみなして、本人は「治療」を受け、周囲は患者さんのことを理解し、追い詰めないでサポートすることを学ぶ「心理教育」が重要だといわれるようになってきました。
社交不安障害の治療や改善について
社交不安障害の傾向は、多かれ少なかれ誰にでもあるものですが、それがひどい場合は、放置しておかないで、周囲の人に相談したりセルフチェックを行ったりして、受診を試みることが大切です。
心療内科や精神神経科が専門ですが、社交不安障害に詳しい専門医にかかることが望ましいでしょう。
社交不安障害の治療の基本は、薬物療法と心理療法です。
薬物療法では交感神経の抑制によって、動悸を抑えたり血圧を下げたりする「β遮断薬」、不安を和らげる「抗不安薬」、そして、行動パタンを変えていく基本薬となる「SSRI(抗うつ薬)」などが適宜用いられます。
また、心理療法については、不安についての取り組みや消極的な考え方を改善していく「認知行動療法」が行われます。
さらに、社交不安に立ち向かう方法として、社交術(SST:ソーシャル・スキル・トレーニング)を学んだり、呼吸法や筋弛緩法などリラックス法を身につけたり、場合によっては、あえて苦手な場面を作り出して、徐々にそこに身を置くことに慣れていく「エクスポージャー:暴露法」なども用いられます。
これらは、信頼できる主治医に従って実施していくことが重要です。
【参考】
・貝谷久宣『社会不安障害のすべてがわかる本』講談社、2006.
・『今日の精神疾患治療指針』医学書院、2013.
<執筆者プロフィール>
山本 恵一(やまもと・よしかず)
メンタルヘルスライター。立教大学大学院卒、元東京国際大学心理学教授。保健・衛生コンサルタントや妊娠・育児コンサルタント、企業・医療機関向けヘルスケアサービスなどを提供する株式会社とらうべ副社長
<監修者プロフィール>
株式会社 とらうべ
医師・助産師・保健師・看護師・管理栄養士・心理学者・精神保健福祉士など専門家により、医療・健康に関連する情報について、信頼性の確認・検証サービスを提供
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