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執筆:井上 愛子(保健師、看護師)
眠りたいのになかなか眠れないというのは、とてもつらいことですね。
寝付くまでに30分以上要するという状態が何か月も続く場合には、“入眠障害”という不眠症の一種や病気が潜んでいる可能性もあります。
しかし、実は日頃の生活の中で行っている行動が寝つきを悪くする原因になっている可能性も多いにあるのです。
今回は「どういことで寝つきが悪くなるのか」を詳しくみていきましょう。
寝つきが悪くなる原因とは?
1.ストレスと自律神経
私たちの身体は自分の意思とは関係なく、自律神経が働いて身体の健康を維持してくれています。
自律神経には、活動モードの交感神経と休息モードの副交感神経があります。眠る時には副交感神経が優位になり、眠る状態をととのえてくれます。
仕事や人間関係、その他さまざまな出来事によってストレスを感じていたり、日中、極度に緊張や興奮をしたりすると自律神経のバランスが乱れてしまいます。
すると眠ろうと思っても交感神経が優位になり、なかなか身体が休息モードに入ることができます。その結果、寝つきが悪くなってしまうのです。
2.スマートフォンやパソコンの光刺激
スマートフォンやパソコンのディスプレイの光に含まれるブルーライトについてはまだまだ研究段階ではあるものの、光が散乱する性質があるため疲れ目を引き起こしたり、脳を刺激して体内時計を狂わせる可能性があることが分かってきています。
とくに夜、寝る直前までパソコンやスマホを操作していると至近距離で強い光を浴びることで脳が刺激され、寝つきが悪くなる可能性があります。
3.カフェインの摂取
カフェインには覚醒作用があります。その効果は、人によっては6時間つづくこともあることもあります。
そのため、夕方以降にカフェインの含まれているものを取ると寝つきが悪くなることがあります。栄養ドリンクにもカフェインが含まれていて、疲労回復のためにと飲んだ栄養ドリンクが睡眠の妨げになっていることもあります。
夕方以降のカフェインの摂取はなるべく避けましょう。
4.入浴
お風呂には心身をリラックさせ、深部体温を高めてくれる効果があります。
40度くらいのお湯に10分ほどつかることで深部体温が上がり、入浴後30分程たつと徐々に深部体温も下がってきます。
実はこの深部体温の変化が、寝つきを良くするためのポイントになっています。
ただし42度以上の熱いお湯は交感神経が刺激されてしまうため、寝つきが悪くなってしまいます。
5.アルコール
ある一定量のアルコールを飲むと、大脳の活動が沈静化されます。そのため、眠気を感じて寝つきが良くなるように感じる人も多くいます。
ところが実は、アルコールが分解される際につくられる「アセトアルデヒド」という物質には、交感神経を刺激して覚醒作用(脳を興奮状態にしてしまうはたらき)があります。
そのため寝つきがよくなったといっても一時的ものにすぎず、眠ったのに熟睡感が得られなかったり、夜中に何度も目が覚めて眠れなくなってしまいます。
そして、結局疲れがとれないということが起こってしまいます。
6.体内時計
毎日の起床と就寝の時間が一定でない人や、食事の時間帯に幅がある人は体内時計が乱れている可能性があります。
体内時計が乱れて睡眠と覚醒のタイミングがずれることで、寝つきが悪くなるといわれています。寝る前の2時間前までには食事を済ませるようにしましょう。
胃の中に食べ物が残る状態を防ぐことができ、質の良い睡眠につながります。海外旅行での時差ボケや深夜労働は、体内時計が狂う原因になりやすいです。
また、昼寝の時間を長くとりすぎることも、リズムを狂わる原因となります。昼寝は15~20分程度にとどめましょう。
7.環境
朝起きて太陽の光を浴びることで「セロトニン」という物質が分泌されます。
すると、夜に睡眠ホルモンである「メラトニン」が分泌されて眠気が起き寝つきよくなります。
夜になっても部屋の中があまりにも明るいと、メラトニンが分泌されず寝つきが悪くなることが考えられます。また、室内環境は光だけではなく、温度と湿度も大切です。暑すぎても寒すぎても眠りを妨げてしまいます。
8.寝具の問題
枕の高さが合わないと頭の位置がうまく定まらず、姿勢をゆがめる形で寝ることになります。これによって、寝つきが悪くなることがあります。
ですから、自分の身体にあった枕をつかうことも大切です。
またマットが硬すぎても柔らかすぎても身体に負担がかかってしまいます。掛布団が重いと圧迫感を感じることもあり、自分にあった寝具を選択しましょう。
9.肩こりの問題
肩こりは、筋肉が凝り固まった状態です。眠りたくてもなかなかリラックスできません。
副交感神経が優位になりにくく、そのために寝つきが悪くなることがあります。
10.内服している薬の副作用
薬の副作用で、不眠が起こることがあります。
すべての人に薬の副作用が出るわけではないのですが、内服を始めて急に寝付きにくくなった、という場合には薬の副作用が関係していることも考えられます。
11.病気によるもの
風邪などの不快症状、咳、鼻づまり、アレルギー症状、痛み、かゆみ、病気や怪我による症状で、寝つきが悪くなることがあります。
なかには「うつ病」による症状で寝つきが悪いということもあります。
生活と眠りには大きな関係がありますね。寝つきが悪いという人で上記に該当するものがあれば、まずはその原因を取り除いてみましょう。
眠りやすい身体と環境づくりを意識することで、寝つきの悪さを解消できる可能性がありますよ。
また最近は睡眠外来を開設している病院も増えています。もし不眠が長期間続く場合には、病院で相談してみましょう。
<執筆者プロフィール>
井上 愛子(いのうえ・あいこ)
保健師・助産師・看護師・保育士。株式会社とらうべ社員、産業保健(働く人の健康管理)のベテラン
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